研究課題
本研究は、人の触感への意識を敏感にすることをファシリテートするインタラクティブなツールを開発し、それを生活の中で使用するための生活実践をデザインするという目的を有してきた。ツールの基盤的位置付けにあるのが、音素を用いた体感辞書である。身体が(例えば足の裏)何かに接触することによって、その境界に生じる摩擦に伴う音声信号と、その時の主観的な体感を表現する音素を、対として登録した関係データベースのことを、体感辞書と呼んでいる。3年間の研究期間を通して、(1)靴に振動マイクを貼り付けて地面を歩いた時の物理信号を取得し、(2)同時に歩く地面の写真を撮り、(3)その時の体感を2つから3つ程度の音素の組み合わせで表現することを可能にするインタラクティブツールを開発した。さらにその時の体感をその音素で表現する意味を自然言語で表現することが、この生活実践を継続するための大きな動機になり得ることも見出した。さらに、足裏体感だけでなく、味覚の触感を音素で表現するという、別ドメインの実験も行い、その体感を自然言語で詳細に記述することを通して蓄積された言語データを分析し、動詞と副詞の表現が詳細になり、種類が増すことも見出した。つまり、触覚への意識を言葉にするという生活行為は触覚を研ぎすますことを促すという認知的現象を検証したことになる。さらに、身体が環境とインタラクションをすることによって自分自身の体感を含めた身体のあり方が進化すること(身体知の学び)の哲学的意味についての論を展開し、言葉で表現することで生活の感性を研ぎすますことの意味について洞察を得た。この知見から、触覚を言葉で表現して触覚体験をより豊潤化するという試みを、生活を邪魔しない形で導入する糸口を掴むことが重要であると考えられる。
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人工知能
巻: Vol.32, No.2 ページ: 215-217
巻: Vol.32, No.2 ページ: 222-228
巻: Vol.32, No.2 ページ: 247-254
建築討論WEB版
巻: Vol.9 ページ: webでページ数なし