研究課題/領域番号 |
26350023
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
池田 千登勢 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (40434063)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 福祉事業所 / 障害者 / 就労支援 / 商品開発マネジメント |
研究実績の概要 |
平成27年度は、以下の2点の研究を進めた。 (1)文献調査 全国の就労継続支援事業所数の増減の傾向と、運営団体、利用者数の状況、どの種類の事業所が増えているのか、また利用が増加している障害種別等について調査した。リソースとしては、厚生労働省が公開しているデータ、地方自治体が公開しているデータ、外郭団体による関連テーマの調査報告書等である。この結果、就労継続支援B型事業所と、A型事業所、就労移行事業所、それぞれの増減に異なる背景があることが推察できた。また、特に全国的に精神障害者の就労支援事業所の利用が増加していることがわかった。しかし、全国の統計データを比較しても、それぞれの増減の背景比較までは不可能であった。また、当初「優良事例が多い県」を「工賃」と「利用者の延べ人数」のデータから抽出する試みは、訪問調査からも質的な正確性に欠けると判断した。
(2)訪問調査 今回はこれまでに優良商品開発事例のある事業所と訪問調査を行った沖縄県、熊本県、島根県の中でも、特に優良事例があり、かつ、2012年時点で事業所数が最も急増しており、一方で現在は増加が落ち着いていることから沖縄県に焦点を絞り、B型だけでなく、複合型施設、就労移行事業所の活動、セルプセンターなど、関連している多方向の視点から訪問調査を行った。この結果、小規模、新規の就労継続支援事業所の運営の問題点、増減の理由、延べ利用者数が多い事業所が必ずしも優良な活動をしていない実態、一般就労の問題点などが把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)文献調査の分析に計画よりも時間を要した。特に、新規事業所の「好事例」の選定が非常に難しかったことによる。ひとつに、「新規」の定義として、データからは「事業所設置」の申請が受理された年月日がわかるが、それが必ずしも実質的な「立ち上げ」ではないことが多いことがわかったこと、また、「優良」の定義として工賃や延べ利用者日数などが実態とリンクしていないことがわかったことによる。 (2)前年の計画に沿って地方自治体の調査を行ったが、今回は実際に当事者からの情報を得て、「優良」とはどのように定義できるのかを考察するところに力を入れ、また、同時にこの問題を多方向から検討するため、すでに調査が行われている地域のうち増加が著しい那覇市の「就労移行事業所」「セルプセンター」「生活支援系事業所」「県と市の同時ヒアリング」等の調査に力を入れた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在、那覇市を中心に沖縄県の関連施設について、多方向調査を実施中であり、引き続き質的な調査を継続する。特に、管理者、運営者のヒアリングを行うだけではなく、就労移行のプログラムに参加、就労定着支援の現場に同行するなど、当事者との関わり面まで深く踏み込んだ調査を行うこととする。 (2)前年度のヒアリングから、新規事業所では特に商品の販売手段に問題があることがわかった。この点で先進的な事例を持っている北海道(福祉障害施設の商品や労働サービスなどをインターネットで販売するサイトの運営に成功)について、那覇市と同様の調査を行う。北海道は全国でも東京に次ぎ2番目の多数のB型事業所があることからも、特徴的な要素、課題などが調査できることを見込んでいる。 (3)これまでの調査から、これらの福祉事業所では商品開発デザイン力にも課題があることがわかった。この点について大学のデザイン学科との共同開発の実施を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、調査地域を絞り込んだことにより、出張旅費の使用が少なかったことによる。また、ヒアリング内容の書き起こしについて、理解の意味も含め、今回は外部業者に委託せず、自身で行ったことにもよる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、テーマ地域として選定した沖縄県についてさらに詳細な調査を重ねる他、先進事例が確認できた地域として北海道地域の調査を実施予定である。 調査後のデータ書き起こし、整理、また、国際学会を含め、論文を投稿する費用としても使用する予定である。
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