研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前半の東アジア圏(日本、台湾、韓国、中国)におけるデザインおよび工芸を通じたヒトとモノの交流を追跡し、日本という国家の枠を超えた東アジア・デザイン史の可能性を探った。20世紀前半は日本が「帝国」として版図を拡大した時期であり、国境を越えて、博覧会や教育研究機関などを通じたヒトの交流や、コレクションや展覧会などを通じたモノの交流が行われた。そうした20世紀前半の東アジアにおけるヒトとモノの交流を手がかりに、国家の枠組みを超えた東アジアという広域的なデザイン史の成立の可能性を探った。 最終年度にあたる今年度は、10月に台北でトランスナショナルなデザイン史をつくる(Making Trans/National Contemporary Design History)というテーマを掲げて第10回国際デザイン史学会議(10th Conference of the International Committee for Design History & Design Studies、会場:国立台湾科技大学)が開催された。この会議で、本研究メンバーはパネル発表「東アジアの植民地のモダニティ1910s-1945:ビジュアル・デザイン、ファッション、工芸」(East Asian Colonial Modernity 1910s-1945: Visual Design, Fashion and Craft)を行い、日本という枠を超えて東アジア圏へと広がりをみせた20世紀前半の日本人の工芸・デザインをめぐる取り組みについて、具体的には、大陸に渡った日本人陶芸家について、台湾博覧会について、北京生活学校についてそれぞれ発表を行った。断片的ながらも東アジアにおけるデザインと工芸をめぐる交流の追跡を通じて東アジア・デザイン史の可能性を探った。
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