研究実績の概要 |
平成26年度の計画に基づき、既婚女性の就業選択行動と教育費の関係について先行研究のレビュー、分析および学会発表を行った。また、分析モデルを構築するためにインタビュー調査(予備調査)を実施した。 本研究の背景には、日本と韓国の教育費の高さがある。具体的に、両国はOECD加盟国のうち教育費、とりわけ私費負担割合が高いことが特徴として言われている。さらに、全教育段階を通じて、家計の教育費に占める私費負担割合は、日本と韓国でそれぞれ約3割、4割であり、OECD加盟国の中で4位と1位に位置する(OECD,2010)という状況がある。それに加え、本研究のテーマに関連する最新事情について資料収集をしたところ、韓国では最近Edu-Poor(教育への投資のため他方面の生活が困窮な状態を指す)という新造語も登場し、教育費への支出が社会的にも議論されている状況が浮かび上がった。今回は、教育費支出の現状を韓国労働パネル2012年(第15次年度)データをもとに確認する作業を行った。上記データから6,733世帯からの情報が得られたが、そのうち、0歳から高校生以下(浪人生含む)の子どもがいる2,114世帯を分析対象とした。分析結果、公教育以外の私教育を利用している割合は分析対象者の約7割強(73.8%)であった。さらに、これらの費用は経済的に負担になるかという質問に対しては、‘非常に負担になる’との回答は394世帯で全体の約4分の1を占めていて、‘やや負担になる’との回答を合わせるとその割合は、約7割に達する結果であった。また、教育費の私費負担割合と母親の就業とはダイレクトな関係は確認できなかった。母親の就業を規定する要因が多様化していることがこのような結果につながったと考えられる。今後、この点を考慮にいれて分析を深めていく。
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