研究課題/領域番号 |
26350035
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
李 秀眞 弘前大学, 教育学部, 准教授 (30588926)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育費 / 就業選択 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
平成27年度の計画に基づき以下の分析を行った。家計の教育費支出増加に対応するために既婚女性が就業を選択するのか、主な収入源以外に子どもの母が就業をしているために教育費の支出が多くなるのか、これは一方的な関係ではなく、同時決定的な関係にあることに注目し、家計の教育費と既婚女性の就業選択行動の関係性を分析した。Kim(2008)の研究によると、母親の就業状態は私的教育費に統計的に有意な影響を与えない。一方、学歴と就業状態を同時に考慮した結果、学歴が低い母親の場合には、就業状態にあることは私的教育費を増加させる要因になるが、高学歴の母親は未就業状態であるほど私的教育費が高いと報告している(Kim, 2008)。他方、Seok・Kim・Nho(2012)は、母親が未就業の場合に、母親が経済活動をしている場合より、家計の私的教育費の支出が多いことを明らかにしている。先行研究の結果を踏まえながら、本研究では、教育費支出における二極化現象を考慮し、所得階層別分析も試みた。家計の教育費と既婚女性の就業選択行動の同時決定性を考慮した分析では、t-1期の私的教育費の割合が高いほど、t期に既婚女性が就業状態にいる確率が高いことがわかった。世帯の所得階層別に分けてみたところ、世帯所得が<下>のグループと世帯所得が<上>のグループでは、私的教育費の割合が高いほど、既婚女性が就業状態にいる確率が高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度には、韓国労働研究院主催の韓国労働パネル学術大会で報告をすることができた。主に韓国労働パネルデータを扱う論文を発表する場であるため、内容についてのアドバイスや質疑が多数あり、論文の質を高めるためのいい機会が得られた。さらに、研究テーマは異なるものの、同じデータを扱う学術大会であるため、データ処理およびパネルデータ分析方法についてのアドバイスももらうことができた。それらを踏まえ、あらたな分析を試みることができ、さらなる研究課題を見つけることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度には、H27 年度までの分析結果を踏まえ、長期パネルデータの利点を生かした分析を試みる。そうすることによって、子どもの成長による教育費の推移と女性の就業選択行動の関係をより明確に描くことができると考える。また、就業選択の経験がある子どもありの既婚女性に対する事例調査も予定している。事例調査は、「パネルデータ分析結果の解釈を深める資料」になるとともに、「家計の教育費に影響を与えると予想されるが、大量データからは把握しにくい親の子どもへの教育期待の効果を図る」ことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会誌投稿料として計上していたが、今回論文を掲載した論文集は掲載料が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度の投稿予定の学術雑誌は、投稿料および掲載料を必要とするため、論文投稿経費として使う予定である。
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