本研究は,集団保育の場における食事場面の観察を通して,幼児の生活文化の共有過程を明らかにするとともに,その共有過程における保育者の果たす役割について検討することを目的とする。具体的には,3歳~6歳までの幼児を対象とし,幼稚園における食事場面を横断的・縦断的に観察し,1.各年齢の幼児が表出する生活文化を明らかにするとともに,年齢間の発達的変化を横断的に捉える,2.幼児による生活文化の共有過程について,3年間にわたる縦断的観察から明らかにする,3.上記の食事場面において,幼児の生活文化共有に対する保育者のかかわりについて,幼児の生活文化の共有過程との関連を明らかにする。本年度の研究については,以下のとおり実施された。 1.これまで得られたデータを基に,年少時・年中時・年長時の幼児とクラスの担任保育者との食事場面の発話の分析を行った。 2.上記の研究成果について,日本家政学会,ARAHE,日本発達心理学会において,研究発表を行った。 本年度の研究結果として,以下の点が明らかになった。年少時の幼児は当初,保育者からの助けを受け,とにかく食べることに集中した昼食時間を過ごしているものの,発達に伴い,食べることに加え,食材に関心を向け,昼食前後の遊びに言及するなどの発話内容の変化がみられた。このことから,食事時間が食べるだけではない,文化的な時間へと変化していることが推察された。年中時の発話内容では,食べることに関するものから,食べること以外を含むものへと変化することが示された。そして年長時に至っては,互いの名前を呼び合い,食材について言及しながら,食べることに関する話題を共有し合っている様子がうかがえた。さらに,「食べる」ことをポジティブに評価する会話が多くなされていることが示唆された。一方保育者の発話の割合は,幼児の発達に伴い,幼児の発話に比して減少する傾向にあることが明らかになった。
|