研究課題/領域番号 |
26350042
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
細谷 聡 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40293500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護 / 介護補助用ウェア / 介護動作負担 / 着衣ストレス / 姿勢 / 腰痛 |
研究実績の概要 |
佐久型介護ビジネス研究会に協力を仰ぎ、厚生労働省で定める要介護度3~5の介護施設関係者(介護経験者も含む)へのインタビューを行い、介護動作(技術)、介護用品について問題点や要求をまとめた。その上で、介護者が着用する介護動作補助インナーウェアの必要性が確認できた。 介護動作補助インナーウェアは、背中にあたる生地にY字帯状に独特な縫製を施し、着用すると背部に施されたY字帯状部分の収縮力(生地が伸びることによる反力)によって脊柱を伸ばすような力が作用するものを設計・試作した。製造には足高メリアス(株)の協力を得た。第一段階として健康な男子大学生10名を被験者にして、3種類のインナーウェアを着用した時の立位姿勢変化を捉えた。また、3時間の着用を行ってもらい、着用前、着用直後、3時間後について心電図計測ならびに着用感のアンケートを行った。この姿勢評価と着衣快適性評価から、着衣快適性や姿勢維持効果が期待され動作補助効果も見込めそうなY字帯状部分の収縮力の試料を確定した。 次に動作補助の実際的な効果の確認と介護者と要介護者の作業負担を見積るため、実験室においてベッド上(高さ60cm)での要介護者の体位変換動作を想定した対象物の持ち上げ動作を実験課題にして3種類のインナーを着用しての筋電図計測および動作負担感調査を行った。学生被験者5名による実験の結果、3種類の中で姿勢や着心地に効果のあった収縮力の試料が作業負担軽減に効果があり、さらに動作負担感も小さいという結果が確認できた。動作補助効果等があるY字帯状部分の収縮力および最終的なデザインを決定できた。 研究成果は、学会(介護動作補助用アンダーウェアの着用時における作業負担計測~前傾姿勢時の腰部に注目して~,計測自動制御学会中部支部シンポジウム2014講演論文集, 2014.9.19, p51-52)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、調査および実験計測とも当初の計画通りに進めることができた。実験計測手法や内容、評価方法にも問題はなく、一連の方法で今後の研究を進められることが確認された。また、開発目標であったインナーウェア背部のY字帯状部分の収縮力および最終的なデザインを決定し作成することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に確立した実験内容にて、介護動作補助インナーウェアを着用した時の実際的な介護動作を対象にして計測し、介護者の作業負担・作業効率、要介護者の介護される負担、さらにはインナーウェアの動作補助効果を定量的に評価する。実験では、介護動作補助インナーウェアと同型・同素材で作られたノーマルインナーウェアの2種類を用いる。介護者として健康な男子大学生10名を要介護者として健康な男子大学生1名の計11名を被験者とする。実験室においてベッド上(高さ60cm)での介護服(要介護者の寝巻)の着脱動作、および体位変換を実験課題とする予定である。要介護者に模した被験者に対して、ワイヤレス遠隔計測で得られる心電図から生理的ストレスを評価する。同時に、介護者に模した被験者の動作は皮膚上8ヶ所(予定:上肢4、腰部2、下肢2)に貼付しワイヤレス遠隔計測により計測される筋電図とビデオ映像から作業負担と作業効率の定量評価を行う。さらに心理的評価は、アンケート調査およびインタビューから評価項目ごとに得点化して統計的に処理をして、生理的計測結果と運動学的計測結果と対応させながら介護動作補助インナーウェアの効果を定量的に評価する。 平成27年度後半(10月~)は、介護現場あるいは介護士を目指す専門学校生の男性1名、要介護者役の学生2~3名を対象として、体位変換あるいは着替え時における計測を実施して、これまでの計測・評価内容に問題がないかを確認する計画である。
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