研究課題/領域番号 |
26350043
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
杉井 潤子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70280089)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジェロントロジー教育 / 高齢化 / 高齢者 / 教科書分析 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
少子高齢化や大衆長寿化とともに人口減少時代を迎え、「老いをどのように支え合い、生き抜くか」が問われている。人生90~100年を見通し、初等中等教育段階からの「個人の長寿の人生設計力、超高齢社会のデザイン力を養う」ジェロントロジー教育が急務の課題である。本研究では、「できるようになる」という正の学習と、加齢とともに「できたことができなくなる」負の学習の二つの視点から超高齢・大衆長寿社会の生き方への理解を促し、ライフコース理解を根底にすえたジェロントロジー教育を提案することを目的とする。 平成26年度は、まず日本の初等中等教育におけるジェロントロジー教育の現状と課題を探るため、韓国の既往研究を比較参照し、小学校・中学校・高等学校の学習指導要領および解説、教科書(小学校道徳・生活・社会・家庭、中学校道徳・社会・技術・家庭、高校公民(現代社会)・家庭(家庭基礎)の分析を行った。その結果、(1)小中高を通して一貫して高齢者との交流・触れ合い・相互理解の促進が図られ、(2)小学校や中学校では、祖父母ではないお年寄りや高齢者に対する尊敬と感謝の気持ちを育て、高校では人権意識を醸成し、高齢者の多様性や個人差にも理解を深め、自らの将来を見通すライフデザインの発想を育てるなど校種の進展が企図されている現状が認められた。しかしその一方で、(3)道徳では生命の有限性と連続性、さらに認知症に関して具体的な理解を促しなど工夫されている一方、社会科では社会保障と財政への負担についての言及が強い。家庭科ではエイジズムへの理解を促し、生涯を通して高齢期の生き方を理解するように方向づけるなど教科による差異があり、さらに(4)高齢者イメージ描写については生き生きとした高齢者が描かれることは相対的に少なく、支援の対象として要介護や病気、弱者など固定的イメージで描かれることがなお根強いなどの課題が析出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、日本の初等中等教育におけるジェロントロジー教育の現状を学習指導要領および教科書分析によって把握でき、課題が析出することができた。 さらに、国際情報交換として、韓国のジェロントロジーに関する初等中等教育の教科書分析に関する既往研究資料を入手し、比較検討し、日本の現状分析に考察に加えることはできた。 ただし、参考資料として韓国の研究を言及したにとどまり、具体的に韓国の教科書分析までおこなってはいない。また、韓国以外の国外のジェロントロジー教育に関する既往研究の成果は収集途中の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、引き続き、ジェロントロジー教育の現状分析を進めるために、韓国、台湾などの教科書分析を行ない、資料収集にあたる。とくにアジアでジェロントロジー教育が充実していると考えられる台湾の祖父母教育に関する調査分析を行う予定である。すでに3月に台湾師範大学および国立国家研究院教科書図書館で予備調査を終えている。同時に、アメリカ老年学会においても日本と韓国のジェロントロジー教育の比較検討結果を報告し、さらに資料を収集する予定である。 また、次年度以降は、それらをふまえて、(1)子どもに「加齢とともに老いて高齢者になること」を理解させるための量的調査研究、(2)高齢者(正の学習をしてきた「かつての子ども」である高齢者)自身が老いを受容していくための質的調査研究を推進していく。
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