現代日本では初等中等教育段階からの「個人の長寿の人生設計力、超高齢社会のデザイン力を養う」ジェロントロジー教育が急務の課題である。本研究では「できるようになることを学ぶ」という正の学習と、加齢とともに「できなくなることを学ぶ」という負の学習の二つの視点から、超高齢・大衆長寿社会の生き方への理解を促し、人生100年の生涯設計を見据えたジェロントロジー教育を提案することを目的としている。 本研究では、日本、台湾、韓国の教科書分析を進め、高齢期やライフコース理解、人生の終わり方について整理を行った。 日本では学習指導要領の改訂が進み、小学校家庭では「幼児又は低学年の児童や高齢者など異なる世代の人々との関わり」が、中学校技術・家庭では「介護など高齢者との関わり方」が新設された。高校家庭では「高齢期の生活と福祉」が強化され、「高齢者を取り巻く社会環境、高齢者の尊厳と自立生活の支援や介護について理解する」とともに共生社会の在り方や「認知症」にも言及されるに至り、人生100年時代を意図したジェロントロジー教育が行われ始めていることが明らかとなった。 台湾では、国民小中学校9年一貫課程の綜合活動教科書5社ならびに「綜合活動学習領域」および「重大課題(家政教育)」綱要、普通高級中學必修科目「家政」の教科書6社および課程綱要を分析した。「祖孫代間教育」や「老人教育」を企図していることが確かめられた。 韓国の教科書分析にあたっては金珠賢氏(韓国・忠南大学校教授)の多大な研究協力を得た。分析対象教科書は小中高校2009年改訂教科過程(2014年・最新)による社会・道徳・技術/家庭教科書309冊。高齢者に対する内容は学年が高くなるほど内容が増加しているが、高齢者イメージはなお扶養と負担の存在として否定的に描かれることが多いことが明らかとなった。
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