本研究は、働く生活者の視点に立ったワーク・ライフ・バランスが実現するのかを、労働問題を生活との関わりから見る家政学から明らかにすることである。そして平成28年度は、特に男性に焦点を当て、男性の労働環境や個人・家庭生活環境がどのような状況であるのか、そして、そのような状況の中で、男性がどのようにワーク・ライフ・バランスを展開しているのかを考察し、男性労働者がどのように暮らしを営むことが、仕事と家庭の男女共同参画につながるのかを、雇用されて働く男性を対象に調査し、考察した。 主な結果は以下の通りである。第1に、男性の個人・家庭生活環境について、例えば生活的自立の実践は、必ずしも彼らの生活的自立を満たすには十分とは言えなかった。更に子どものいる男性を対象とした場合、彼らの育児の実践は、年代が若い世代では積極的な傾向は見られたものの、年代が上がるほど、消極的な傾向が見られた。第2に、男性の労働環境については、週60時間以上働く男性も1割弱程度見られた。また、残業や休日出勤が評価の対象とされる職場や、自分の仕事が終わっても帰りにくい文化がある職場に働く男性も見られた。第3に、家庭責任を積極的に担っている男性たちは、決して労働環境が「働きやすい」(第2点目で述べたような環境とは逆の)わけではなく、労働時間も決して短いわけではなかった。さらに彼らは、自身の日々の生活について、ワーク・ライフ・バランスが取れているとは認識していない傾向が見られた。しかし彼らは、その他の男性と比べて、生きる上で大切にする軸足を、企業・仕事・男性文化に置かず、健康や家族や仕事以外の趣味などに見出す傾向も見られた。そして同時に、生きる上で大切にする軸を、企業・仕事・男性文化に置かない男性は、職場における男性優先の企業文化には否定的であり、子育てをする同僚にも友好的な意識をもつ傾向が見られた。
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