研究課題/領域番号 |
26350063
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
安川 あけみ 弘前大学, 教育学部, 教授 (70243285)
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研究分担者 |
神鳥 和彦 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70177765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | UVカット性 / 粒子 / アパタイト / 染色 / セリウム / チタン / カルシウム / 堅牢度 |
研究実績の概要 |
微粒子担持法と染色法を用いて,UVカット性の高い布を作成することを目的に研究を進めてる。これらはいずれも紫外線を吸収または反射する物質を繊維に練り込む前加工法に比べて,環境への負荷が低い後加工法である。 微粒子担持法では,湿式法によりセリウムまたはチタン含有量が異なるカルシウムヒドロキシアパタイト固溶体を合成し,構造を粉末X線回折,透過型電子顕微鏡,電界放出型走査電子顕微鏡,表面分析,赤外分光光度計,示差熱分析および窒素吸着による比表面積測定により調べ,UVカット性を紫外可視分光光度計で調べた。粒子の形態とUVカット性能から,布に担持する粒子をCe/(Ce+Ca) = 0.01およびTi/(Ti+Ca) = 0.05に決定した。綿布に粒子担持を行い,UVカット性を紫外可視分光光度計で調べたところ,布のUVカット性能が向上することがわかった。以上の結果はPACIFICHEMおよび化学系学協会東北大会で研究発表を行った。 染色法では,黒ブドウの一種であるスチューベン果皮,カシス,紫タマネギおよび茶色タマネギの外皮を染色材料とし,種々の布を染色して,UVカット性をはじめとする種々の性能が染色によりどう変化するのかを調べた。UVカット性は紫外可視分光光度計で測定した透過スペクトルで評価した。いずれも濃色に染色された布では,可視領域だけでなく紫外領域においても透過率が低下し,UVカット性が向上した。染色布の耐光堅牢度および洗濯堅牢度は高くはなかったが,6種類の媒染剤(Mg, Al, Ca, Fe, TiおよびCu)を用いた媒染染色布を比較したところ,媒染剤の種類により堅牢度を上げられることがわかった。以上の結果は繊維製品消費科学会および家政学会で研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子担持法ではUVカット性能が異なるセリウムまたはチタン含有カルシウムアパタイト粒子を合成でき,粒子の構造やUVカット性能を詳細に調べられたため,研究が順調に進んでいると言える。今後の布への担持条件の検討に十分な段階に来ていると判断できる。 染色法ではいろいろな種類の天然染料について,綿布,絹布および羊毛布の染色を行い,染色条件と得られた染色布の色彩の関係が充分に調べられたと言える。UVカット性能および堅牢度,すなわち種々の要因に対する染色布の色の保持力についても十分な情報が得られたと言え,おおむね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
粒子担持法では,今後,布への担持条件,すなわち,分散媒,粒子濃度,担持温度および繊維の種類等について検討を行い,各々の繊維に対して最適な粒子担持条件を検討する予定である。担持布の構造と性質については,電界放出型走査電子顕微鏡で構造を,表面分析で粒子の担持量を,また,紫外可視分光光度計でUVカット性を調べる。 染色法では,染色材料として種々の天然植物染料を用いてるため,堅牢度が低いものがある。時間経過とともに,染色布の性能がどのように変化するのかを,数ヶ月単位で調べる予定である。特に,染色布の変退色,すなわち,可視領域での表面反射率の変化が布のUVカット性にどのくらい影響を与えるのかを詳細に調べたいと考えている。
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