微粒子担持法および染色法という,環境に対して低負荷の2種類のUVカット加工法により,UVカット性能をもつ布を作成し,加工前後の布の構造と性能を調べた。 微粒子担持法では,水酸化カルシウム,硫酸チタン30%水溶液およびリン酸を用いた湿式法により,粒子中のTi含有量Ti/(Ti+Ca)が異なる一連のチタン-カルシウムヒドロキシアパタイト固溶体粒子を合成し,構造を種々の方法で調べた。XRDで結晶構造を調べた結果,Ti/(Ti+Ca) = 0-1のすべての条件でアパタイトが生成した。FE-SEMで形態を観察し,EDS分析で表面原子濃度を調べたところ,出発溶液中とほぼ同じ比率でTiが粒子中に取り込まれたが,粒子の長さはTi含有量とともに変化した。チタン含有アパタイト粒子ならびに浸漬法によりこれらの粒子を担持した綿布は,UV-vis測定の結果,UV吸収能をもつことがわかった。 染色法では,カシス,黒ブドウ(スチューベン)果皮および紫タマネギ外皮の色素抽出液を用いて,綿布,絹布および羊毛布の染色を行い,染色前後の布の構造と性質を種々の方法で調べた。カシスや黒ブドウのようなアントシアニン類色素を用いた染色布はUV吸収能と抗菌性を持つことがわかった。また,紫タマネギにはアントシアニン類色素の他に茶色タマネギと同等の黄色色素が含有されていたが,短時間の色素抽出と低温での染色により,黄色色素の布への染着を抑制できることがわかった。いずれの染色材料でも染色布の耐光堅牢度は比較的低かったが,変退色してもUVカット性は維持されることがわかった。これらの結果は(一社)日本繊維製品消費科学会2016年年次大会ならびに(一社)日本家政学会第68回大会において発表した。また,Textile Research Journal,繊維製品消費科学会誌ならびに日本家政学会誌に論文として投稿し,受理された。
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