研究課題/領域番号 |
26350065
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
飯野 由香利 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40212477)
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研究分担者 |
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部, 教授 (70178094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教室 / 温熱環境 / 空気環境 / 教師 / 環境制御 / 環境教育 |
研究実績の概要 |
①教室内の住環境(温熱・空気環境)の実態把握:冷房設備がなく、教室が南面と北面に配置されているオープンスクールのA小学校を対象に実測調査とアンケート調査を実施した。その結果、南向き教室の室温は夏・冬期ともに日射の入射により高く、北向き教室の児童の快適性は夏期に窓が全開できず良好な通風環境が得られないこと、及び直達日射が入らず十分な明るさの確保が難しいこと、等の知見を得た。一方、冷房設備を設置しているB小学校(教室窓面が南と西に面し、3階建片廊下タイプ)で実測調査とアンケート調査を実施した。その結果、非冷房時における3階教室の室温が2階教室より高く、東向き教室の室温が南向き教室より高いこと、設定温度27・28℃の冷房時の室温は2階の教室で設定温度以下となること、3階の教室での室温は午後の設定温度より多少高くなり、設定温度が低いほど設定温度と室温との差は拡大すること等の知見を得た。 ②教師による環境制御の実態把握と環境制御方法の構築:B小学校の熱放射が大きい最上階教室において、教師が長時間冷房を使用し、設定温度を26℃以下に変更することにより、児童が許容できる温冷感を維持していることがわかった。 ③教師に対する環境教育体制の整備:暖かく・涼しく住まうための実験実習方法について考案し、授業実践を行った。涼しく住まうために、日射遮蔽と蒸発潜熱の活用及び通風の有効利用等から構成されるいくつかの窓面を提示し、窓前で体感する実験を中学校で実践した。さらに、暖かく住まうために、熱伝導の異なるいくつかの床材に載り、足裏からの熱流出の相違と、対流や放射による体からの熱放出を実感できる実験を小学校で実践した。これらの実験結果から、現象原理や体と周辺環境との熱の授受に関する興味・関心が増し、理解度が高くなったことを示した。さらに、これらの熱環境に関する現象原理や実験方法について解説した教材を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①教室内の住環境(温熱・空気環境)の実態把握:教室の配置による室内環境について冷房設備のない学校とある学校で実測・アンケート調査を実施した。階数や外側窓面の方位及び教室窓が南と北に面する教室とでは熱・光・空気環境において大きく異なることを把握した。 ②教師による環境制御の実態把握と環境制御方法の構築:B校においては、冷房時における室温は設定温度より1℃低い温度で制御されていることを確認した。さらに、日射による熱放射の影響が大きい教室での教師による冷房の制御において、設定温度や冷房使用時間を変えることにより対処しており、児童が許容できる温熱環境を保持していることを明らかにした。 ③教師に対する環境教育体制の整備:涼しく住まうや暖かく住まうなどの熱環境に関する実験実習方法を提案し、小中学校で実践した。校舎を利用した実験実習を行い、クイズ形式で結果を予測した後に熱・空気環境を体感し、最後に現象原理を教えることにより、児童・生徒の興味・関心を引き出し、理解度が上昇することを示した。さらにこれらをまとめた教材を製作した。
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今後の研究の推進方策 |
①教室内の住環境(温熱・空気環境)の実態把握:これまで調査した学校の形状と異なる学校の室内温熱環境について調査する必要がある。 ②教師による環境制御の実態把握と環境制御方法の構築:これまで明らかにして来た教師による環境制御の実態を踏まえるとともに、児童の知的生産性を考慮した環境制御方法を構築するための指針を示す必要がある。児童にとって疲労感が少なく集中できることにより高い学習効率を保つことのできる冷房設定温度の制御範囲を明らかにするための調査を実施する。 ③教師に対する環境教育体制の整備:熱環境に加えて、光・空気・音環境に関する現象原理を理解でき、校舎を利用して児童・生徒が体感できる実験実習方法を考案する。具体的には、光環境において、採光や人工照明に関する実験実習を考え、ライトシェルフや光ダクトなどの光環境の形成の新たな手法を教える授業を提案する。また、空気環境については、空気の流れを可視化する方法を考案し、熱環境(壁や天井面の表面温度や放射、空気の密度など)の影響を考慮しながら流れのメカニズムを理解できる実験実習方法を示す。いくつかの窓の開け方による通風時の気流の可視化に関する実験実習方法を提案する。さらに、すでに製作した熱環境に関する教材に光・空気・音環境の内容を加えた教材を製作する。製作した教材を新潟市と長岡市内の中学校と高校の家庭科の教師に送付する。各教師が教材の内容を参照して実践した授業や実験実習方法についての意見や改善点についてアンケート調査を実施して、教材の内容を改善して充実させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
教材の一部を製作したものの完成していないために、用紙代や印刷代及び製本代等が次年度に繰り越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
熱環境に関する内容に加え、光・空気・音環境などに関する内容を含む教材を製作して印刷・製本し、中高校の家庭科教員に送付する。
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