研究課題/領域番号 |
26350067
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
喜成 年泰 金沢大学, 機械工学系, 教授 (90195321)
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研究分担者 |
立矢 宏 金沢大学, 機械工学系, 教授 (10216989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 触覚センサ / 風合い / 被服材料 / 感性評価 / 布地 |
研究実績の概要 |
本研究では,単純な構造で摩擦係数が測定可能な触覚センサを製作し,同センサを布地表面に押しあてて回転させながらなぞることで,その摩擦特性,幾何学特性などを,異方性を考慮して簡便に測定し,これまで困難とされてきた布地の風合いを定量的に示すことを目標としている.前年度までに,布地の特性が大きく異なる代表的な30種類の試料に対して測定を行い,動摩擦係数の変動や,その周波数解析結果から,布地表面の風合いを評価可能であることを示した. 今年度は,風合いが類似した試料を対象に,その特性の詳細な評価や識別などの可能性を検討した.すなわち,シルクに似た風合いを持つ8種類の織物試料を対象として,自作した測定装置により,布地表面方向に対する動摩擦係数の変化を測定した.得られた測定結果から,動摩擦係数の平均値,標準偏差,変動係数,さらに,回転角5度毎の動摩擦係数の平均値および平均振幅を求め,それらの標準偏差を算出した.また,同様に,得られた動摩擦係数の変化波形をFFT解析して,特徴的なスペクトルを算出した. 以上の測定結果を基に,8種類の試料をTukey法などによって分類することを試みた.その結果,試料は動摩擦係数の観点から3群,周波数解析の結果からも3群に分類された.これら3群の分類は滑らかさの風合いに関連すると考察された.以上の結果を人が布を実際になぞり,その滑らかさをサーストンの一対比較法で検査した結果と比較したところ,おおよそ一致し,また,従来用いられてきた評価法であるKESよりも高い相関が確認され,提案する装置の有用性が明らかとなった. また,表面を多数回,荷重を変えながら連続的になぞり,なぞり回数に対して表面特性の変化を等高線図で表す評価法を提案し,数種類の試料に関して検討した結果,荷重やなぞりの繰り返しによる表面圧縮特性の評価を容易に行うことができ,その有用性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに布地表面の異方性を考慮した動摩擦係数を測定して,その結果から布地の摩擦特性,幾何学特性を評価することを可能とし,特徴が明らかに異なる試料に対して,その有用性を確認した. 今年度は,風合いが類似した試料に対しても,製作した装置および提案した評価方法によって,布地の詳細な表面特性を測定できることを示し,その結果が従来の汎用的な装置と比べても,より人による官能試験結果に一致することを示した.また,表面の圧縮特性に関する評価方法も検討した. これらを基に,今後,さらに,布地の風合い評価が詳細かつ,適切に行えると考えられ,順調に研究が進められていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,H27年度に提案した,布地の圧縮特性評価法を用いて,多数の試料の測定を行い,データを蓄積する.また,同時に布地表面のなぞり接触による変化を,レーザ変位計,マイクロスコープなどで測定し,以上の測定結果と比較する. 次に,提案する表面圧縮特性評価法の結果と,人の官能試験の評価から,風合いとの関連性を明らかにする.さらに,これまでに提案した,布地表面の摩擦特性,周波数解析による幾何学的特性と,以上の圧縮特性を総合的に評価して,布地表面の風合いを定量的に示すことを可能にするとともに,同結果と人の感性との関連を明らかにする.さらに,統計学,知識工学などを応用して,提案する測定装置による評価結果から布地の風合いを提示する感性評価システムの開発を行い,本研究のまとめとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では圧縮荷重変更のための装置改良を行う予定であったが,その前にまず,提案する圧縮荷重評価法の確認を行い,適切な荷重変更幅の検討を行うことを先行させた.このため,装置改良が次年度に繰り越しとなり,その分の費用が繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き,種々の布製品試料を収集する.また,触覚センサを製作するためのひずみゲージや,装置改良のための材料,測定システムの部品等を購入する.また,なぞり試験時の圧縮荷重を変化させるため,装置改良に必要な部品等を購入する.
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