本研究では,単純な構造で摩擦係数が測定可能な触覚センサを製作し,同センサを布地表面に押しあてて回転させながらなぞることで,その摩擦特性,幾何学特性などを,異方性を考慮して簡便に測定し,これまで困難とされてきた布地の風合いを定量的に示すことを目標としている.初年度は布地の特性が大きく異なる代表的な30種類の試料に対して測定を行い,動摩擦係数の変動や,その周波数解析結果から,布地表面の風合いを評価可能であることを示した.2年めには風合いが類似した試料として,シルクに似た風合いを持つ8種類の織物を対象として,自作した測定装置により布地表面方向に対する動摩擦係数の変化を測定し,動摩擦係数の平均値,標準偏差,変動係数,回転角5度毎の動摩擦係数の平均値および平均振幅,および動摩擦係数の変化波形をFFT解析して,特徴的なスペクトルを算出した.以上の測定結果を人が布を実際になぞり,その滑らかさをサーストンの一対比較法で検査した結果と比較したところ,従来用いられてきた評価法であるKESよりも高い相関が確認され,提案する装置の有用性を示すことができた. 最終年度においては,布の圧縮特性に着目し,表面を多数回,荷重を変えながら連続的になぞり,なぞり回数に対して表面特性の変化を等高線図で表す評価法を提案し,多くのの試料に関して検討した結果,荷重やなぞりの繰り返しによる表面圧縮特性の評価を容易に行うことができ,その有用性が確認された.また,厚さや表面形態の異なる不織布試料の表面特性に及ぼす圧縮荷重の影響を検討し,回転なぞりによる表面特性把握の有用性を示した.併せて多種多様な布試料に対して直線なぞりによる表面特性と回転なぞりによる表面特性を比較し,本研究で提案した,回転なぞりによる表面特性把握の手法が,直線なぞりと同等の表面特性を短時間で収集することが可能であることを示した.
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