研究課題/領域番号 |
26350072
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
延原 理恵 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (40310718)
|
研究分担者 |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
田中 勝 山梨大学, 総合研究部, 教授 (70202174)
佐藤 慎也 山形大学, 教育文化学部, 教授 (20260424)
曲田 清維 愛媛大学, 学内共同利用施設等, その他 (00116972) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 住まい・まちづくり学習 / 住教育 / まちづくり / 建築教育 / 地域資源 / 持続可能な社会 / 地域力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域の社会的な「つながり」に着目し、地域力向上に関与するソーシャル・キャピタル形成にプラスの作用をもたらす住まい・まちづくり学習の実践モデルを提案することである。本年度(平成27年度)の主な成果は次の通りである。 (1)住まい・まちづくり学習の事例調査:国外の実践事例として子どものための建築教育が先進的なフィンランドでのまちづくり学習を調査した。フィンランドの子どものための建築学校(Arkki)では、子どもの頃から住まい・まちづくりに対する感性を育むための取組みが子どもの発達段階に合わせて様々な形態で展開されていることがわかった。そこでは子どもを対象としたプログラムの他に、学校教員向けのプログラムや学習教材キットが用意されていた。また、国内事例としては伊根町の舟屋を活用した小中学生の住まい・まちづくり学習や伝建地区の内子町でESD学習活動に関するヒアリング調査を行い、学校教育の中で住まい・まちづくり学習が新たな学力形成に寄与する可能性を把握できた。 (2)住まい・まちづくり学習の実践モデルの開発:研究分担者の役割テーマに応じて、次に挙げる住まい・まちづくり学習モデルの開発および実践を行った。①伝統的建造物群保存地区にある国の重要文化財指定の住宅を通した住まい・まちづくり学習、②ミュージアムを活用した住文化継承学習、③子どもと築く復興まちづくり協働プロジェクト、④地域性や地域資源を考慮した学校教育における住まい・まちづくり学習、である。学校教育の中での展開については、UIA(世界建築家連合)による学校向けの人工環境教育ガイドラインと日本の小学校学習指導要領を照合しながら検討し、住まい・まちづくりに関してクロスカリキュラムを用いれば、さまざまな教科を統合し、多様な分野の学習を定着させながら、主体的に考える力や創造する力等を育める可能性が把握できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、住まい・まちづくり学習の優れた国内外の実践事例の現地調査を行い、その結果、文献等からはわからなかった学習環境や運営上の工夫等も含めた実態を把握することができた。国外調査については現地との調整や研究費予算から調査対象の厳選にやや苦慮したが、科研費補助金によって国外調査を遂行することができ、国外の住まい・まちづくり学習の実態把握にとどまらず、住まい・まちづくり学習の国外実践者と今後につながる研究交流もできた。住まい・まちづくり学習の実践モデルの開発に関しては、研究分担に応じて各研究者が実践を行っているが、地域社会の「つながり」との関係については充分検証できなかった。以上のことから、現在までの達成度は「当初の計画以上に進展している」とは言い難いが、おおむね順調に進展しているといえるだろう。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)住まい・まちづくり学習の事例調査および分析:前年度に引き続き、住まい・まちづくり学習の優れた事例の調査および分析を行う。さらに、次年度(平成28年度)は地域社会の「つながり」に関与する地域資源(モノ・コト・ヒト)の抽出と整理、分析を行い、その関係性を可視化する。前年度までに調査した実践事例も併せて、教育システム、市民の関心度、住教育を取り巻く環境等諸条件の比較を行い、環境に応じて導入可能な取組みについても検討する。 (2)住まい・まちづくり物語にみる住民と地域資源とのかかわり:住まい・まちづくり学習・活動事例の中から、住まい・まちづくり物語が把握できた事例に対して、住民と地域資源とのかかわりに着目して、地域資源を介した住まい・まちづくりの進展を考察する。ここでは(1)で検討した地域資源の関係性を用いて、地域の生活像や課題と重ね合わせて、住まい・まちづくり学習の地域社会の「つながり」形成に対する働きについて検討を行う。 (3)「つながり」に着目した住まい・まちづくり学習の実践モデルの検討:研究組織による研究会を開催し、(1)(2)の研究成果から地域社会の「つながり」に有効に作用する住まい・まちづくり学習モデルについての検討を行う。研究成果は所属学会等で発表し、評価や情報を得ながら、実践モデルの開発に取り組む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担の役割テーマに応じて、各々が住まい・まちづくり事例の視察調査を行う予定であったが、分担者の一名は、震災復興まちづくりの関係から、住まい・まちづくり学習の実践に早期に着手する必要があり、計画を変更したため、未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
このため、本研究メンバー間の打合せや研究会を研究の進捗に応じて行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
|