研究課題/領域番号 |
26350073
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
高橋 裕子 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 臨床研究企画運営部, 客員研究室長 (00346305)
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研究分担者 |
東山 明子 大阪商業大学, 総合経営学部, 教授 (20228711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | きもの / 健康影響 / 心理学的検討 / 経済影響 |
研究実績の概要 |
近年、中学校でゆかた授業が開始されるなど、きもの(和装)を見直す動きが出てきている。しかし和装着用の医学的影響についての 研究はほとんどなく、わずかにみられる研究もほとんどが1980年より以前のものである。その内容も、和装に慣れていない学生等 の短期の和装着用による健康影響に関する検討がほとんどであり、和装の健康影響に関して否定的な結果となっている。またそれらの 研究の研究手法は古く、疫学的手法を用いた検討や近年開発されたバイオマーカーを用いた検討はほとんど実施されていない。 日常的に和装を常用する人たちからは「着物は楽」「腰痛に良い」等の良い評価が多くきかれ、前述の研究結果とは大きな乖離がみられた。 着物初心者と着物常用者における着用時のバイオマーカー評価(被服圧を含む)を実施したところ、着物初心者と着物常用者の着用方法の相違に原因があることが示唆された。また着物 を常用している少数集団への疫学調査において、着物着用者は食事や運動、喫煙等の生活習慣面において非着用者よりも健康的であることが示唆された。また日本人の体形は過去1500年 は身長の短縮が続いたのちにこの150年で急激な身長の伸長が認められ、きものの着尺を一部変更の必要があること、着物着用年齢にある女性のおよそ5.6%において現在の着尺をそのまま用いることが困難となっていること、過去の気温変動との関連を有することについても示唆された。心理学的な検討では、積極性評価および自己肯定感はともに、きもの着用経験によって改善することを検証した。経済影響としてきもの販売業者への面接調査において、2013年の和食文化の世界遺産登録後に和の文化志向が強まったが、きもの産業への経済影響は軽微であるにとどまっていることが示唆された。これらの研究成果をまとめた冊子を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究課題の多くはすでに実施し、まとめの段階に入っている。なおネットを利用したきもの着用者の意識調査については2018年度に延期したが、これは2013年の和食の世界遺産登録および2020年の東京オリンピックを前にした一時的な和の文化志向の高まりによる影響を回避するためでもある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度となるため、ネット調査をふまえた検討を実施し、医療経済的観点からの考察を加える。これまでに得られた成果をふくめ、それらを統合し、きもの着用に関するさまざまな健康面での疑問や不安に回答を与えるとともに、平成29年度に作成した冊子を配布することにより研究成果を社会に還元する。また継続的に研究結果を提供しうるHPや相談窓口を設立して研究成果の社会貢献につとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は最終年度となるため、ネット調査の実施とこれまでに得られた成果をふくめ、それらを統合し、きもの着用に関するさまざまな健康面での疑問や不安に回答を与えるウエブサイトの立ち上げを実施する。さらに平成29年度に作成した研究成果をまとめた冊子の配布も実施する。これらの実施には相当額の経費が必要であることから次年度使用とした。
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