研究課題/領域番号 |
26350074
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
村田 順子 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90331735)
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研究分担者 |
田中 智子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20197453)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活支援ハウス / 高齢者 / 居住の継続 / 生活支援 / 地域ケア / 地域居住 |
研究実績の概要 |
本研究は、民活が期待できない地域における地域内での居住の継続を可能にする「住まい」と「生活支援」のあり方を明らかにすることを目的とし、「高齢者生活支援ハウス(以下、ハウス)」を研究対象としている。2014年度は、まず全国のハウスの実態を把握するために、現在確認できるハウス562ヶ所全てに対しアンケート調査を行った。有効回収数は266(47.3%)であった。結果を以下に述べる。 ハウスは、定員10人前後の小規模施設が多く、デイサービス、ヘルパーステーション等を併設していることが多い。相談・緊急時の対応のほか、食事の提供、家事支援などの独自サービスを提供している。定員は平均12.1人だが、定員を充足している施設は23%にすぎず、多くは空室を有している。入居理由としては、自宅での生活に不安を感じた高齢者が、福祉関係者や家族など周囲のすすめによりハウスへの入居に至っている場合が多いが、中には虐待や住居を失った場合の緊急措置としての利用もみられ、ハウスが多様な使われ方がされていることが分かった。入居条件として自立生活可能を条件としている場合が多いにも関わらず、入居者の高齢化に伴う身体状況の低下や、認知症の入居者を有するなど、家事援助等の生活支援だけでは生活が困難な入居者が増加していることが課題となっていることが明らかとなった。 また、スウェーデンの地方都市部の高齢者福祉の実態を明らかにするため現地調査を実施した。人口1万人弱の小規模コミューンでは、在宅支援と在宅医療・リハビリの連携が密に取られ、かなりの重症患者でも自宅での生活が可能となっている。在宅支援従事者は准看護師が主となっており、在宅支援の質向上を図っている。2009年の自由選択法施行以降、ケアについても高齢者の意思がより重視される傾向にあり、在宅化が進んでいる。在宅支援の効率化の為、IT等テクノロジー利用が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は、①「高齢者生活支援ハウス」の全国実態調査、②スウェーデンの地方都市における高齢期の生活、③「地域の居場所」づくり(H26~H29)継続調査 を計画し、ほぼ計画通りに実施できた。 ①には、来年度以降の生活支援ハウスの訪問調査の予備調査も含めていたが、②のスウェーデン調査での支出が嵩み、また①の悉皆調査の準備から分析に至るまでの作業量が想定以上多かったこともあり、金銭的・時間的に実施が困難となってしまったが、今後の研究には支障はない。継続的に調査を進めている③「地域の居間」については、不定期ではあるが、現地を訪問し現状把握に努めている。 以上より、現在までの研究の進捗状況は概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、①「高齢者生活支援ハウス」への訪問調査、②「高齢者生活支援ハウス」居住者に対する調査を予定している。 前年度に実施した「高齢者生活支援ハウス」の全国実態調査を基に調査対象施設を選定し、訪問調査を行う。訪問調査では、近隣県の生活支援ハウスへの訪問を中心としながら、離島、豪雪地域などへの訪問を実施する予定である。アンケート調査の回収率も想定していたよりも良く、無記名で行ったにも関わらず名刺や担当者名を書いてくれているハウスもあり、訪問調査にも好意的に対応してもらえるのではないかと推測している。 また、訪問調査をスムーズに実施するために、アンケート調査の結果概要を全ハウスに送付する予定である。 研究分担者との連絡、打ち合わせも支障なく行えており、今後の研究の推進に問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度にスウェーデン調査を行うにあたり、コーディネーターの体調不良にともない途中で後任を探し作業をお願いしたため、当初計画していた予算よりも支払が嵩んでしまったため20万円の前倒し請求を行った。もともと不足額は20万円以下だったが、前倒し請求が10万円単位でしか行えないため次年度使用額が生じたのであって、研究が計画通りに進まなかったためではない。
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し請求を行ったため、次年度使用額分は当初の予算の一部である。そのため、研究計画に大きな変更はなく、当初の予定通り「生活支援ハウス」の訪問調査を行う。ただし、前倒し請求分、予算が減額になるため訪問先を研究拠点からなるべく近いところを中心とすることとする。
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