平成29年度は、都市部の生活支援ハウス(以下、ハウス)の役割を把握するため政令指定都市であるO市のハウス2ヶ所を訪問した。また、昨年度までの研究からハウスが地域居住の継続に一定の役割を担っているものの終の住処とはなり得ておらず、特養の入所条件である要介護3に至るまでの要介護高齢者の行き場がないことが課題として明らかとなった。この課題解決の重要性から、本年度は予定を変更し、地方都市における地域密着型の高齢者住宅3ヶ所を訪問調査し、地域居住の継続に必要な要件について検討した。 都市部のハウスでは、持ち家居住が多い地方都市部や過疎地域とは異なり、家賃が支払えなくなった、老朽住宅が取り壊しにあい住む場所を失ったなど、経済的理由に加え住宅確保の困難に直面した入居者が近年増加傾向にある。また、課題としては過疎地のハウスと同様、退去後の行き場がないことがあげられるが、それに加え、身寄りがない、家族と疎遠、また保証人が先に亡くなるなどで転居が困難になる事例が認められた。 ハウスでの居住の継続には、夜間のケアがハードルとなっている。介護保険サービスにより夜間のケアが確保できれば居住の継続を認めてもよい意向を示すところもあるものの、地域内にサービスの提供事業所がないという課題がある。独居で家族に頼れない高齢者が今後更に増加していくことから、地域内居住を支える24時間ケア体制整備の必要性が改めて認識された。また、今後のハウスのあり方を検討するにあたり、ハウスの位置づけが曖昧であることも課題として浮かび上がった。 リロケーションダメージを防ぐためには、自宅から転居した先で最期まで住み続けられることが本来は望ましい。居住の継続を目指したハウスの今後のあり方を探るため、地方都市部における小規模高齢者住宅3ヶ所の訪問調査を行い、今後の研究の方向性について検討を行った。 研究成果は、学会で発表を行った。
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