研究課題/領域番号 |
26350075
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
雙田 珠己 熊本大学, 教育学部, 教授 (00457582)
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研究分担者 |
干川 隆 熊本大学, 教育学部, 教授 (90221564)
坂本 将基 熊本大学, 教育学部, 准教授 (80454073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肢体不自由児・者 / 座位姿勢 / ズボン / 着脱動作 / ボタンの掛け外し / 表面筋電位測定 / 上肢機能評価 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
(1)指先にマヒのある人が留め具使用で感じる疲労度の負担 平成27年度は、指先にマヒのある人が掛け外しのしやすいボタンの形状とボタン穴の関係を明らかにするため、掛け外し時の指先の動作特徴、所要時間、心拍数、表面筋電位の測定を行った。また、リハビリ医療の視点から上肢・母指・第2指の可動域と上肢機能評価を行い、これらの結果を併せて、障害の状態別にボタン掛け外し動作の特徴と生理的負担の大きさを考察した。対象者は母指と第2指の上肢にマヒがある人7名(痙直型脳性マヒ患者5名、アトテーゼ型脳性マヒ患者1名、二分脊椎患者1名)とした。ボタンの種類は被験者の負担を考え、糸足ボタン、金属足付き平ボタン、リベットボタンの3種類(直径17㎜)とし、ボタン穴は縦穴と横穴として、巾2.5㎝長さ15㎝のベルトに1種類ずつ取り付けた。水平位置での動作実験は、高さ70㎝の机上で6通りの組み合わせでボタンの掛け外しを行い、垂直位置については正面胴囲位置で同様の実験を行った。さらに、5名を対象に、正面胴囲位置を基準に4㎝上と下の高さで同様の実験を行った。 一方、被験者の障害の状態把握は、理学療法士との連携で上肢可動域、上肢機能評価(STEF)、座位での重心移動、粗大運動評価を行った。STEF評価の結果から、被験者は上肢機能別に3グループに分けられた。各グループに適したボタンの形状およびボタン穴との組み合わせについて現在分析中である。 (2)座位姿勢に適したズボンパターン設計のための人体計測 基盤研究(A)(課題番号25242010研究代表者:大塚美智子)との連携で、平成27年7月に熊本大学男子学生141人を対象とした身体計測を実施した。座位姿勢に適したパターン作製に必要な項目として、座位ウェスト高、座位腹部厚径、座位胴囲、座位腹囲、立位股上前後長、座位股上前後長の6項目を加えて測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)指先にマヒのある人が留め具使用で感じる疲労度の負担 当初計画では、障害者の被験者数は7~10名であり、現在7名まで実験が終わっている。今後も被験者数は増やしていく予定であるが、障害の状態別に被験者を集めることはできないため、27年度の分析結果をみながら被験者数を決定する。 (2)座位姿勢に適したズボンパターン設計のための人体計測 大学生男子の身体計測は概ね順調に進み、データ処理まで完了している。全国調査が遅れているため全体傾向は分析できないが、座位姿勢に関するデータ分析を始めた段階である。ズボンパターンの製作は遅れているが、簡易製図ソフトと簡易CADの準備まで完了している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)更衣の自立を支援する修正ズボンの設計 平成28年度は座位姿勢のデータ解析とクロッチポイントの測定を行い、健常者・障害者を問わず座位姿勢に適したユニバーサルなズボンのパターン製作を行う。さらに、27年度のボタンの解析結果を取り入れ、上肢に障害のある人が一人で更衣することを目指した修正ズボンの設計を行う。ズボンパターン製作については、簡易製図ソフトを用いて試作を行い、クロッチポイントの測定結果(男子学生約10名を予定)を加えてCADでのパターン製作を行う。パターンの妥当性は、段階的に試験着を製作し健常者による着装状態の評価で行う。なお、CADでのパターン製作については専門家の指導を得ながら、連携協力者とともに実施する。また、上肢にマヒがある人に向けた修正ズボンの設計では、前述のパターンに26年度の結果から得られた腰囲部分のゆとり量を加味し、ボタンの位置と形状を考慮したパターン製作を行う。ボタン掛け外し時の生理的負担のデータは現在解析中であるが、対照群となる健常者の筋電位データが不足している。そのため、今後は追加実験を行い解析の精度を上げる予定である。 (2)修正ズボンの日常生活における使用テスト 修正ズボンの着脱のしやすさと日常生活での適応性を確認するため、ズボンを試作し使用テストを行う。被験者はSTEFの評価が上位の2名とする。試験着は対照群を一般的なパターンで製作したズボン、実験群を修正ズボンとし、それぞれを着衣した時の生理的負担を着衣動作解析、表面筋電位、心拍変動、加速度、所要時間によって分析・評価する。日常生活については、室内を這って移動する時の着くずれの観察、排泄時の動作のしやすさ、座位姿勢における快適性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度はほぼ予定通りの使用額であったが、障害がある被験者10名の確保が難しく、現在7名までの実験を終了している。そのため謝金に残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の実験結果を分析し、被験者がさらに必要であれば追加実験を行い被験者への謝金として支払う予定である。追加実験が不要な場合には、28年度の謝金費用と併せ使用する予定である。
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