研究課題/領域番号 |
26350078
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
長嶋 直子 和洋女子大学, 生活科学系, 助教 (30459599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ラッカーゼ / 酸化還元酵素 / 漂白 / 退色 / 反応染料 / 環境調和型染色加工 / 移染防止 / 洗剤 |
研究実績の概要 |
本研究は環境負荷低減ならびに安心安全な繊維染色加工および洗浄を目指し、酸化還元酵素の一つであるラッカーゼの染料に対する退色挙動を調べ、反応染色におけるソーピング、洗浄における移染防止への有効活用を目的とする。 平成26年度は、異種二官能型反応染料(Sumifix Supra、住友化学)の三原色および黒色(Sumifix、住友化学)水溶液中に、Trametes sp.由来のラッカーゼを主成分とするラッカーゼM120(天野エンザイム)を添加して、染料の退色速度、退色挙動を分光学的方法によって調べ、退色の最適条件の確立を目指した。また、ラッカーゼ溶液にメディエーターすなわちフェノチアジン‐10‐プロピオン酸(PPT)を添加して、メディエーター存在下におけるラッカーゼの効果を検討した。 染料の退色挙動はメインピークの経時変化によって調べた。反応初期は一次反応を示した。染料初濃度Coとt時間後の染料濃度Ctを用いて、ln(Co/Ct)をtに対してプロットし、その初期勾配から退色速度定数kを算出した。その結果、青色染料の退色速度は非常に速く、特に測定温度範囲(30~55℃)の高温においては、ほとんど瞬時に分解して退色し、昇温するにつれてk値は非常に大きな値を示した。また、PPTの添加効果は見られなかった。一方、黄色染料はほとんど退色しなかった。赤、黒色染料では若干の退色が見られたが、青色染料のそれよりかなり小さく、PPTの添加によって退色が促進される傾向が見られた。したがって、ラッカーゼによる退色挙動には明らかに基質特異性があり、分解には染料の化学構造が大きく関係していることが示唆された。本実験で用いた染料の化学構造は明らかにされていないが、ラッカーゼの染料分解に及ぼす基質特異性をさらに調べることによって、退色速度の向上が期待できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行する上で最も重要である基礎的データすなわち「染料水溶液中におけるラッカーゼの添加による退色効果」を集約することができた。ラッカーゼによる色素分解には基質特異性があることが明確に示された。また、ラッカーゼに対するメディエーター添加効果についても明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、染料の化学構造とラッカーゼの基質特異性との関係を明確にするため、反応染料の色素母体として用いられている、化学構造の明らかなアゾ系およびアントラキノン系の酸性染料を用いて、退色挙動を検討する。 反応染色におけるソーピング工程においてラッカーゼを添加し、未固着染料を除去する際に必要な多量の水・エネルギーを削減することを目指す。具体的には、平成26年度の成果すなわち「染料水溶液中におけるラッカーゼの添加による退色効果」を参考にして、反応染色後のソーピング工程における残浴濃度を比色定量し、ラッカーゼ添加による脱色の最適条件(酵素濃度、処理pH、温度、時間、浴比等)を詳細に検討する。そのために、未処理羊毛および防縮加工羊毛織物を用いて、異種二官能型反応染料で染色し、水のみ、および非イオンまたはアニオン界面活性剤水溶液によるソーピングにおける染料の溶出挙動を分光学的方法によって調べる。さらにラッカーゼ/界面活性剤共存下でのソーピング挙動について同様に検討し、ラッカーゼ添加の最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
ごくわずかであるが、平成26年度の当初使用計画額から次年度使用額が生じた理由としては、消耗品の購入の際に複数のメーカーから取り寄せた見積もりを精査し、節約を念頭に取り組んだ結果と思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は、平成27年度の研究計画に基づき、試薬、ガラス器具等の消耗品購入に充当し、成果を得るために有効に活用する。
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