研究課題/領域番号 |
26350082
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研究機関 | 文化学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 真理子 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (10409336)
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研究分担者 |
熊谷 伸子 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (80328898)
小出 治都子 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (20733687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 袴 / 快適性 / 機能性 / 民族衣装 / クールジャパン / 和服 / 伝統 / 所作 |
研究実績の概要 |
本邦の伝統的民族衣装である“袴”を,日本発のクールなファッションとして広く世界に知らしめることを目指し,その快適性・機能性を体系的,包括的に明らかにすべく研究を展開している.今年度の主な成果は次のとおりである.1.袴の特徴的なデザインとして,ウエストから腰にかけて締める前紐と後紐,腰部を後方から圧する腰板が挙げられる.このような体幹部圧迫が,姿勢保持と動作性に及ぼす影響を検討するため,被験者実験を行った.その結果,男性の袴の締め位置(Jacoby line近傍)での圧迫が,骨盤を直立位に近づけ,脊柱起立筋を補助し,歩行動作を円滑にすることが明らかとなった.2.伝統的所作時に袴の果たす役割の検討に向け,予備実験による実験条件の設定を行い,本実験を実施できる状況が整った.3.現在,袴として認知されている中から,和食料理店の店員の制服である袴式ユニフォームに着目し,その機能性と快適性を検討した.袴式ユニフォームの需要は,近年の日本食ブーム,和食の無形文化遺産登録により,増加傾向にある.被験者実験の結果,袴式ユニフォームは現代的なパンツに比し,暑熱環境下で温熱的快適性の高いことが明らかとなった.運動機能性については商品間の差が大きく,職業動作に配慮したデザインの必要性が示された.4.日本発の有力なソフトパワー“マンガ”における袴着装キャラクターに注目し,カテゴリーマップでの分類と考察を行った.さらに,『ちはやふる』と『信長協奏曲』の2つのマンガについて検討し,袴着装キャラクターの登場が,若年層の袴イメージを形成していることを明らかにした.5.袴の源流である漢服下衣の歴史を遡り,その変遷を辿ることで,より機能的な形に向け下衣が如何なる変化を遂げてきたかの検討を開始した.また,袴同様,本邦の伝統的衣服の一つである褌に着目し,その快適性の一端を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した「袴の運動機能性・姿勢保持性の評価」について,被験者実験を終え,順調にデータ集積を果たした.次年度実施予定の「伝統的所作時に袴の果たす役割の検討」についても,予備実験を終え,本実験遂行可能な状況を整えた.「カルチャー系コンテンツを通しての袴のイメージ調査」についても,分析を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度,27年度に実施した袴の温熱的快適性,運動機能性,姿勢保持性の結果を受け,伝統的所作時に袴の果たす役割の検討を行う.日本の伝統的所作の多くは,重心を低く保つ必要があり,腰を締めて下半身を安定させる袴の着装が,重要な役割を担うと考えられる.特に,書道・剣道等,“道”の文化における袴の重要性を,科学的観点から明らかにする.さらに,国内外での袴の使用状況,イメージ・認知度の調査,資料分析を引き続き行い,“伝統文化の体現”でありかつ“新しいモード”としての袴を発信するのに必要な方策を考究する.
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次年度使用額が生じた理由 |
袴の運動機能性・姿勢保持性の評価実験において,既存の機器を使用しての実験が可能であり,物品費・消耗品費が安価に抑えられた.
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次年度使用額の使用計画 |
袴の使用状況・市場調査及びカルチャー系コンテンツを通しての袴のイメージ調査において,海外も含めた大規模調査を予定しており,その調査費用に充当する予定である.また,伝統的所作時に袴の果たす役割の検討に関する実験での被験者謝金、実験消耗品費、学会発表費,論文投稿費を予定している.
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