本研究は、伸縮性を有する機能性衣料を着用した場合に皮脂汚れが付着し、洗濯したのちも残留して、それらが機能性衣料の伸縮性能の低下につながることを明らかにするとともに、その解決策として洗浄方法の確立を目指すものである。平成26、27年度は、機能性衣料に用いられるポリウレタン糸は油汚れが浸透して洗濯による除去がきわめて難しく、残留しやすいために、ポリウレタンを含む機能性衣料は着用と洗濯によってその伸縮性が低下することを明らかにした。また、機能性低下は、洗剤の種類、すなわち界面活性剤の種類によって影響の違いが現れることが示された。本研究の3年目となる平成28年度は「機能性衣料の機能保持に適した洗剤組成および洗浄条件について検討」することとして、機能性衣料の伸縮性に及ぼす界面活性剤の化学構造の影響について検討した。界面活性剤の疎水基の大きさの異なる陰イオン界面活性剤および親水基の大きさの異なる非イオン界面活性剤の水溶液にポリウレタン糸を浸漬し、乾燥後その伸長量を測定して、伸長量変化と界面活性剤の化学構造の関係を検討した。 界面活性剤の疎水基の炭素数の長さの影響を見るために、炭素鎖長がC10~18と異なる脂肪酸ナトリウムを用い、次に界面活性剤の親水基の大きさの影響を見るために、エチレンオキシド鎖が6~18と異なるポリオキシエチレンアルキルエーテルを用い、さらに、界面活性剤の立体的な構造の影響を検討するために、疎水基のアルキル基がC12前後でベンゼン環を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとベンゼン環を持たないラウリル硫酸ナトリウムの影響を比較した。その結果、界面活性剤の疎水基の長さ、親水基の大きさはポリウレタンの伸長量の増加と関係し、ベンゼン環があると伸張量を減少させることがわかった。
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