修正溝型流路測定器による粘性評価法の検討と液体食品の粘性評価 粘性が未知である非ニュートン性液の粘度を,昨年度までに得られた実験的関係により評価する,修正溝型流路測定器に特有な方法を検討した.基礎となる関係は摩擦係数とレイノルズ数の積(修正摩擦係数)を相対流動距離の関数として表す.本測定器による測定値を用いて修正摩擦係数を決定することにより粘度と,同時に発現する弾性の影響を予測できることを例証した.このような粘性評価法は,嚥下困難者に対して一般的に採られる範囲での粘度をもつ増粘飲料についての測定に適用でき,本システムは看護や介護の場での粘性調節に有効であることが示された.
本研究を含むこれまでの研究では嚥下プロセスにおける特徴的な要素を取り出し,その要素について剪断速度およびその速度下での粘度を評価することを検討してきた.着目した要素は咽頭部での挙動である.嚥下プロセスにおける咽頭部での食塊の流れを身体の側方から観ると,口腔から送られた食塊は,中咽頭にある喉頭蓋により誘導されて食道へ達する.また,後方から観ると食塊は,喉頭蓋により迂回させられてそれの両側を通る経路をとる.口腔から食道までをひとつの流路とみなすならば喉頭蓋は,流れを制御する弁であり,流れに対する障害物であると解釈できる.このような流れを,流路に弁を取り入れ,障害物を設置することにより模擬した.すなわち,溝型の流路を用いて,流路に設置したゲートの開度の調節により弁として機能させることで,ゲートを通過する流れをつくる,また,流路に障害物としての円柱を置くことで円柱周りの流れをつくるという流れの模型を考案してきた.今後は,これらの模型での着想を合わせて採り入れる流路をもつ模型を製作し,新しい溝型流路測定器として用いて粘性評価法の確立,システムの構築を図る.
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