これまでの科学研究費若手研究(B)(21700744、23700883)の継続研究として、地球温暖化対策、食料自給率の向上などを目指し、高温障害米澱粉の開発、市販米粉パンの調製方法の改良について取り組んだ。 1.高温障害米澱粉の開発 地球温暖化により高温の影響を受けた高温障害米は、外観不良と品質劣化が顕著である。高温障害米として、2010年新潟県産コシヒカリ(乳心白米)を用いて、その澱粉に新たな機能性を付加するため温水処理(25℃、48℃、54℃)を各12時間施した。温水処理後の高温障害米澱粉の熱特性(糊化)について、現有の超高感度示差走査熱量計(SII製DSC6100)、簡易偏光顕微鏡(オリンパス製CX41LF、DP26-CU、DP2-PC-S)を用いて検討した。高温障害米澱粉は、完熟米澱粉(コントロール)と同様に温水処理の影響を受けた。しかし、各澱粉に及ぼす温水処理効果の相違については今後より詳細に検証する必要がある。 2.市販米粉パンの調製方法の改良 グルテンフリーの米粉パンの膨化に及ぼす温水処理の効果を検討した。米粉パン生地の一部(30%置換)を予め25℃または48℃で各12時間温水処理し、市販ドライイースト、砂糖、食塩、無塩バター等を加え業務用ミキサー(キッチンエイド社製KSM7)で撹拌した。生地膨張力測定法により、38℃下の生地の膨化特性を調べると(加水比率160%)、25℃12時間温水処理の米粉ドウは実験開始直後よく膨化したが、最大膨化比は未処理よりも小さかった。これは、熱分析において低温側の糊化開始温度が低下したことから、内在酵素により米澱粉が低分子化し、膨化開始が促進されたと推察された。その後、加水比率を130%に設定し添加物を用いて製パンすると、膨化比、比容積が増加し、米粉パンの製法に改善が認められた。今後は、高温障害米パンの製法への適性を調べる必要がある。
|