米を美味しく炊きあげる加熱・加圧プログラムの調整は一般に難しい。炊飯条件を最適にし、食感の良い炊飯米に仕上げるため、米の水分状態変化と比熱特性などの物性情報から、主として炊飯米の硬さを粒子内品質の重要指標として推定するモデルについて検討した。試料米には二つの品種を用いた。一つは流通品種代表としてのヒノヒカリ、もう一つは村井が開発した新品種の村井79号である。どちらの品種も、通常の炊飯器による炊飯米の官能評価では評価が高く比較品種として取り上げた。まず、試料米の吸水試験を行い、吸水速度の特性を調査した。その結果、村井79号は流通品種のヒノヒカリよりも吸水速度が非常に高いことが明らかとなった。また、試料米を炊飯器の昇温プログラムで炊飯した炊飯米について、その弾力性試験をレオメーターにより咀嚼モードで行い、硬さ、粘着性、凝集性、ガム性、弾力性などの食感品質指標を算出した。t検定による結果として、試料間で凝集性とガム性で有意差が5%危険率で認められた。さらに、DSCによる試料米の比熱特性を常温から炊飯沸騰する100℃の範囲で測定した。村井79号はヒノヒカリに比べてDSC曲線が60℃辺りから上昇する傾向が認められた。この点で村井79号は炊飯プロセスのコントロールが仕上げ炊飯米の内部品質に影響するものと考えた。 以上の結果を踏まえ、水分吸収特性と比熱変化特性を、炊飯米の内部品質としての咀嚼指標値へと関連づける推定モデルについて検討した。水分吸着時の10分おき90分までの含水率変化のデータ、および常温から10℃おきの80℃までのDSC曲線のデータをもとに、咀嚼指標値との関係をニューラル・ネットワークによりモデル化した。その結果、試験範囲の試料に関しては精度良い推定が可能となった。他の品種の米に対しても同様にデータ集積を行うことで、一般性を持たせられるものと考える。
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