研究課題/領域番号 |
26350095
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 琉球大学, 農学部, 教授 (50201257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サトウキビ / スイートソルガム / 含蜜糖 / 香気成分 / 呈味性 / 嗜好性 / 食品機能性 |
研究実績の概要 |
本研究では、亜熱帯甘味資源からの甘味素材の栄養成分や機能性成分を分析するとともに、嗜好性と加工法との関連について検討を行う。さらに、甘味素材に含まれる機能性成分による食品の品質維持や安全性の向上への寄与も解析することを目的としている。本年度は、サトウキビからの新たな甘味素材の食品成分および機能性成分を分析し、黒糖と比較を行う。また、スイートソルガムについては実験室レベルでシラップを調製し、食品成分および機能性成分の分析と機能性甘味素材としての評価を行う。主な研究成果は以下の通りである。 〇サトウキビからの新たな甘味素材(含蜜糖)の嗜好性および機能性成分の解析と評価 新たな含蜜糖の色調は黒糖に比べて薄く、香りの指標となる香気総量も減少していたが、味覚センサーにおいて呈味性の違いは認められなかった。したがって、黒糖に比べ、調理に使う食品素材の香りを活かす食品加工に適していると考えられた。また、抗酸化活性に関係するフェノール化合物含量は黒糖の約60%を含んでおり、ミネラルについては同等の含量を示したことから、機能性もある程度保持していることが確認できた。 ○スイートソルガムシラップの嗜好性および機能性成分の解析と評価 スイートソルガムシラップはサトウキビシラップに比べ、グルコースやフルクトース含量が高いことから、液糖での形態が適していると考えられた。味覚センサーでの呈味性についての分析結果から、黒糖に比べ甘味は弱いものの、苦味があることが明らかになった。これはスイートソルガムにカリウムが多いためと推定された。一方、抗酸化活性に関係するフェノール化合物含量やラジカル消去活性は、黒糖よりも高い値を示した。以上のことから、スイートソルガムからはサトウキビとは異なるフレーバー特性や機能性をもつ甘味料の開発の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は大きく2つのテーマからなる。それぞれの達成状況は以下の通りである。 〇サトウキビからの新たな甘味素材(含蜜糖)の嗜好性および機能性成分の解析と評価 前年度設定した卓上型含蜜糖製造装置を用いて、新たな含蜜糖と黒糖を調製し、本年度に予定していた食品成分(水分、糖、有機酸、ミネラル)や嗜好性成分として色彩色差計による色、味覚センサーによる味およびガスクロマトグラフィーによる香りを分析し、黒糖の分析結果と比較できた。また、両試料において機能性成分としてフェノール化合物含量と抗酸化活性を測定できた。これらの結果は、学会発表するとともに、国際誌へ投稿中であり、研究はおおむね順調に進展していると考える。 ○スイートソルガムシラップの嗜好性および機能性成分の解析と評価 前年度設定した卓上型含蜜糖製造装置を用いて、スイートソルガムシラップ(70%糖濃度)と比較のために黒糖シラップ(70%糖濃度)を調製した。両試料について、本年度に予定していた食品成分(水分、糖、有機酸、ミネラル)や嗜好性成分として色彩色差計による色およびガスクロマトグラフィーによる香りに加え、味覚センサーによる味についても分析でき、データを比較することができた。また、両試料において機能性成分としてフェノール化合物含量と抗酸化活性を測定でき、これまでの糖蜜データとの比較を行うことができた。これらの結果は現在、論文としてまとめ中であることも含め、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度のテーマの研究の推進方針は以下の通りである。なお、最終年度にあたるため、取得したデータの総合的な解析や順調に進んだ場合は、構造解析等の追加実験行う。 ○サトウキビおよびスイートソルガムからの甘味素材由来成分の有害微生物の増殖抑制効果の検証 サトウキビおよびスイートソルガムからの甘味素材に含まれる成分による有害微生物の増殖抑制効果を、モデル食品を設定して検証する。具体的には、サトウキビおよびスイートソルガムを用いて調製した甘味素材から樹脂吸着と各種溶媒を用いた溶出により、粗抽出物を調製する。さらに、粗抽出物から活性成分をカラムクロマトグラフィーやHPLCを用いて順次分画する。一方、有害微生物は品質、特に食品の色、味、香りに影響を与える微生物を評価系の中でスクリーニング後、分画物を添加したモデル食品で評価する。研究が順調に進んだ場合は、甘味素材からの有害微生物の増殖抑制効果をもつ物質の単離と構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究の実施やデータ解析のために実験補助員費を主要に計上していたが、学部学生および大学院生が研究を行ったため、経費がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度となり総合的なデータ解析が必要となる。また、昨年のように学部学生および大学院生の研究支援が得られないため、博士研究員を一定期間雇用し、研究を迅速に進める予定である。その他は、消耗品として、分析用試薬、ガラス器具、溶媒等の購入を予定している。また、経費に余裕があれば、論文の英文校閲費用、学会(日本食品保蔵科学会、日本食品科学工学会)への参加費として使用する予定である。
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