日本料理では、振り塩や酢〆に代表されるように、食品素材に下味をつける、身を引き締めることでうま味を閉じ込めるという調理技法がある。これらは、食品表面上での塩の溶解および塩や食酢の食品内部への浸透により食品成分と相互作用を引き起こすと考えられるが、食材に対する最適な調理条件は経験に頼らざるを得ないのが現状である。そこで本研究では、食品加工において、最適な漬け上がり、塩分濃度、食酢濃度、加工条件を非破壊かつリアルタイムで測定できるようなシステムを開発し、生活習慣病予防の観点から減塩にも対応することを目的として研究を行った。平成28年度は、実際に食品を対象にし、実験を行った。食品表面に有機酸溶液を添加した後、インピーダンス値を測定した結果、有機酸の濃度増加に伴い、インピーダンス値は低下した。さらに、実際の酢〆調理技法を模して、表面に食塩水を浸透させた食品に対しても同様に有機酸溶液を添加し、インピーダンス値を測定した結果、有機酸浸透に伴うインピーダンス値の低下が認められた。モデル食品と同様な結果が得られたことから、電気インピーダンス法によって食品中の有機酸浸透挙動ならびに塩蔵食品による有機酸浸透挙動が計測可能であると考えられる。食塩および有機酸を含んだ食品から水抽出液を作製し、味覚センサ測定を行った。食塩および有機酸の含有量増加に伴い、酸味や塩味の強度の増加が確認出来た。塩味や酸味の強度は官能評価だけでなく、味覚センサによっても評価可能であることが示唆された。
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