研究実績の概要 |
キクは中国や日本などに分布する多年草で、古くより栽培されており身近な植物のひとつである。キクは解熱、解毒、消炎作用が認められており観賞のほかに薬用植物としても利用されている。地方・伝統野菜である食用ぎくは、含まれる特異成分の値、その食品特性については不明な点が多い。そこで、食用ぎくの呈味成分に関する特徴について検討を試みた。すなわち、新潟県在来系統品種の食用ぎくについて、味覚センサーによる味質および、花弁に含まれる呈味関連成分(たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物、ナトリウム、ポリフェノール類ほか)ついて調べた。その結果、味覚センサーによる味質評価は、果糖、ブドウ糖、ショ糖構成比率が花弁試料で類似していることから、これらの総量と甘味評価に強い関連を有することが明らかとなった。また、苦味雑味、渋味刺激で強い値を示す黄色花弁の食用ぎくは、赤紫色・薄紫色系の花弁に比べて、苦味、渋味関連成分であるポリフェノール量をより多く含むことがわかった。分類の指標として花弁の色の違いは有用と考える。なお、味覚センサーの評価結果から、食用ぎく花弁の酸味・塩味項目は、ヒトにほとんど影響を及ぼさないレベルであることがわかった。さらに、食用ぎく花弁のポリフェノール成分が、どのような特性・機能性を有しているのか探索した。抗酸化性は、総ポリフェノール量との間に強い相関を示すことが認められた。また、野菜の中で比較的ポリフェノール量が多いと報告される「しゅんぎく」の値よりも明らかに多く含むこと、ルテオリン7-O -(6"-O -マロニル)-グルコシド,アピゲニン7-O -(6"-O -マロニル)-グルコシドを含むことがわかった。広く利用されている菊葉の部位における特異成分、食品特性に関するデータがほとんどみあたらないことから、花弁部位にくわえて詳細な検討が必要であると考える。
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