研究課題/領域番号 |
26350106
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研究機関 | 新潟リハビリテーション大学 |
研究代表者 |
宮岡 里美 新潟リハビリテーション大学, リハビリテーション研究科, 教授 (10465479)
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研究分担者 |
宮岡 洋三 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (10134941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食生活科学 / 咀嚼・嚥下 / 風味 / 反応時間 / 咬筋筋電図 / 呼吸 / 嗅覚 / 味覚 |
研究実績の概要 |
昨年度は、1)咬筋筋電図を利用した実験手法の「信頼性」の検証と、2)風味検出時間に及ぼす生体要因の解明を目的に研究を進めた。 1)時期の異なる2回の実験から得られた風味検出時間データについて、「再検査法」によって信頼性を検証した。被験者は16名の健常若年成人男女であり、被検食品は5種類の果汁風味グミを使用した。平均35日(SD = 15.1日)隔たった148組の風味検出時間データをピアソンの相関係数を用いて調べた。全風味を込みにして算出された相関係数は、r = 0.35 (P < 0.01)と統計的に有意であった。また、1回目と2回目の風味検出時間の平均値(それぞれ4.38秒と4.42秒)間には有意な差が認められなかった。個々の果汁風味別で解析した結果、オレンジ風味はr = 0.57 (P < 0.05)と有意であったが、他の4種のグミではrが0.27から0.47までの範囲にあり、いずれも有意ではなかった。 2)本研究の実験場面は、臼歯間にオブラートで包んだ被検食品を噛み始めてから何らかの風味を検出した直後に手元スイッチを押すまでの時間を測る。それは主に被検食品が発する「口中香」を検出していることが想定される。そこでは呼吸気流が影響すると考えられるので、風味検出時点と呼吸位相との関係を解析した。主な知見は、(1)呼息相と吸息相の平均時間に有意差はなかったが、(2)風味の検出時点は呼息相が吸息相の約2倍で、統計的にも有意に多かった、(3)風味検出を課さず、単に被験者が任意のタイミングで手元スイッチを押した場合には、(2)のような呼息相への偏位は見られなかった。 以上の結果から、1)本実験手法の信頼性は、風味検出課題の全体としては確認できたが、個々の風味についてはさらに検証が必要とわかった、2)本実験手法による風味検出では呼吸気流が影響し、呼息流の吸息流に対する優位性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(「研究実績の概要」を参照)の通り、初年度の目標である「被検食品の選定と実験手法の確立」はほぼ達成されたと考えられるため。また、風味の検出と呼吸との関係も分析し、仮説検証が成立しているため。
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今後の研究の推進方策 |
市販品の果汁グミを被検食品として本研究に着手したが、研究途中で被検食品の一部が入手できなくなった。そのため、一部のフレーバーでは十分なデータが得られず、また香気成分の分析も一部で未了となっている。 次年度は、まずこの分析を完了して、既に分析済である「呈味成分(糖、有機酸)」およびニオイ強度(機械測定)のデータと統合していく予定である。その上で、この統合分析データと反応時間データの関連を解析する。併せて、風味の検出時間のみではなく、風味の認知に要する時間及びその質的内容(官能評価等)も調べていく。 また、既成の食品を被験食品として得られる知見には限界があるため、可能ならば呈味成分及び香気成分の種類や濃度が調整された被検食品を開発し、それを用いた風味検出反応時間を測定していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験への被験者数を延べ約80人と想定していたが実際は統計的見地から約50人で十分となり、またその謝礼も想定額より低額で済んだため、「人件費・謝金」は予算より低く抑えることができた。 物品(消耗品)については個人研究費等で既に購入済の物品を使用した。また、今年度の研究データを解析するに当たり、当初予定していた高性能の統計ソフトは必要ないことがわかり、購入を見合わせた。これらの事情から、「物品費」も予算より低く抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
「風味検出課題」において、被験食品が含有している呈味成分及び香気成分は大きな影響を及ぼす。これまでは、「研究実績の概要」の通り、日常生活場面で食する安価なグミを被験食品として実験を進めてきた。そこでの結果は、複雑に複合された味や香りが含有された食品を咀嚼する中で何らかの風味を検出するのに要した時間を計測していたこととなる。この実験法で得られる知見には限界がある。 今後は「今後の研究の推進方策」の通り、被験食品の呈味成分及び香気成分の種類や量(濃度)をコントロールし、その風味の検出時間を計測していきたいと考えている。そのため、被験食品作成のためのレシピ考案やその食品作成に要する食材費や人件費が必要となる。今年度の差額分はこれら被験食品作成費として使用していく計画である。
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