研究課題/領域番号 |
26350108
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
小川 宣子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (30139901)
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研究分担者 |
山中 なつみ 中部大学, 応用生物学部, 教授 (00257528)
小林 由実 中部大学, 応用生物学部, 助手 (40512108)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵 / 熱変性 / 起泡性 / 乳化性 / リポタンパク質 / コレステロール |
研究実績の概要 |
鶏卵は卵黄のコレステロール含量が高いことから、鶏卵の摂取を避ける傾向も認められる。しかし、鶏卵の摂取は必ずしも血中コレステロール濃度を上昇させるものではないことが国内外で以前より報告されている。一方、鶏卵は希釈性や熱凝固性、起泡性などの様々な調理特性を持ち、これらの特性を活かして調理された後に摂取される場合が多い。これらの調理特性はいずれも鶏卵のタンパク質の性質に基づくものであり、調理操作に伴ってタンパク質の性状は大きく変化している。よって、卵白タンパク質や卵黄リポタンパク質の性状が調理操作によって変化し、血中コレステロール濃度の上昇抑制作用に影響を及ぼす可能性がある。これまで卵白や卵黄に含まれる個々の成分の作用が検討されてきたが、実際の鶏卵の摂取方法をふまえた評価が今後の課題であると考え、研究を行うことを目的とした。 卵白タンパク質は80℃以上の加熱によりトランスフェリン、オボグロブリン、オボアルブミン、リゾチームは変性したが、耐熱性があるオボムコイドは加熱による顕著な変化は見られなかった。また、卵黄タンパク質は70℃までの加熱では顕著な変性は見られなかったが、80℃以上の加熱でいずれの卵黄構成タンパク質も一気に変性が見られた。 卵黄由来のリン脂質とリポタンパク質の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響を比較した。AIN-93G飼料組成の大豆油を乾燥卵黄で置換した飼料を卵黄リポタンパク質飼料、これと同量の卵黄由来リン脂質と精製コレステロールを添加した飼料をリン脂質飼料とし、7週齢SD系雄ラットに10日間摂取させた。LDL-コレステロール濃度は、卵黄リポタンパク質を摂取したラットが11.3 mg/dl、リン脂質を摂取したラットが9.7 mg/dlであった。リン脂質を摂取した場合の方が低い傾向がみられ、卵黄リポタンパク質の作用について明らかにすることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は調理に伴う卵白タンパク質ならびに卵黄リポタンパク質の性状変化を調べ、卵黄リポタンパク質の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響を調べることを計画した結果、卵白タンパク質および卵黄リポたんぱく質の加熱による性状の変化をアクリルアミド電気泳動法にて構成タンパク質の変化を把握し、加熱変性した卵黄リポタンパク質が乳化性に及ぼす影響について調べることができた。 また、卵黄由来のリン脂質は、腸管内でコレステロールとミセルを形成して吸収を阻害することにより血中コレステロール濃度の上昇を抑制すると考えられている。しかし、卵黄の高い乳化性はリン脂質ではなく低密度リポタンパク質によるものであるとの報告があり、コレステロールの吸収を抑制しているのはリン脂質ではなくリポタンパク質の可能性が高いと考えられる。そこで、卵黄由来のリン脂質と卵黄リポタンパク質について、血中コレステロール濃度に及ぼす影響をラットを用いた動物実験において比較を行う計画を立て、この案にもとづき動物実験を実施し、血中脂質濃度を測定することができた。 これらの結果はおおむね申請の研究計画通りであり、当初の計画内容として挙げた糞中および肝臓中のコレステロールや胆汁酸の測定は血中コレステロールの結果を考察後、測定を進めていく予定である。 以上のことより、現在までの達成度をおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、平成26年度で行った卵白タンパク質および卵黄リポタンパク質の熱変性について加熱の際のミネラル,糖,脂質などの副材料がそれぞれのタンパク質に及ぼす影響について調べ、調理時に使用する調味料とタンパク質変性の関係を考察する。また、外からの圧力を加える「泡立てる」という操作が卵白タンパク質および卵黄リポタンパク質に及ぼす影響を調べる。これらの操作により変性した卵黄リポタンパク質と乳化性とのかかわりを調べるとともに、平成26年度と同様に「希釈」、「起泡」の調理操作を加えた卵白タンパク質、ならびに卵黄リポタンパク質について、血中コレステロール濃度抑制作用をラットを用いた動物実験において調べ、調理によるタンパク質の性状変化が生理作用に及ぼす影響を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は「加熱」による卵白タンパク質および卵黄リポタンパク質の性状変化を把握するとともに、卵黄リポタンパク質の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響を検討することを当初の研究計画とし、この計画はおおむね計画通りに遂行できたが、血中コレステロール値を検討するにあたり、糞中および肝臓中のコレステロール・胆汁酸を平成26年度に測定する計画とし、動物実験で糞および肝臓の採取は行った。しかし、熱変性した卵黄リポタンパク質の血中コレステロール値を考察した上で、糞および肝臓のコレステロール値の測定の実施を行うこととしたため、糞および肝臓のコレステロールおよび胆汁酸の測定に必要な試薬などの使用の分が余剰として出てきた。また、実験結果を学会発表する予定であったが、学会発表の申し込みと合わなかったので、平成26年度は学会発表分の旅費や参加費が余剰として出てきた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には当初平成26年度で測定予定だった平成26年度の動物実験で得られた試料(糞、肝臓)の測定を行う。また、平成26年度で得られた結果を学会および講演会で発表を行うことを予定している。 平成27年度は当初の予定通り平成26年度の残額分と合わせた金額を使用予定である。
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