「冷凍流通食品」は流通のために冷凍された食品で、食品衛生法で規定された「冷凍食品」のような保存基準や微生物規格基準がなく、微生物学的な衛生状態について不明なものも多い。そこで冷凍流通食品の細菌汚染状況を調査し、食品を汚染する危害食中毒菌の制御方法を確立することを目的に研究を行った。 平成26年度から平成27年度は、冷凍流通食品試料(冷凍食品試料を含む)から低温細菌9株を分離、同定し、それらの増殖特性、食品の品質劣化に及ぼす影響を測定した。得られたデータをもとに汚染菌5株を選択し、食品流通時の不適切な温度管理によって食品の「部分的解凍や再凍結」が起こった場合の汚染菌の増殖性を明らかにした。また汚染菌の制御方法として、初発汚染度の低減、解凍時の低温制御、食品保存料による増殖抑制を検討した。 平成28年度は、食品分離菌および低温下で増殖可能な食中毒起因菌のリステリア菌とエルシニア菌を用いて増殖制御方法を検討した。食品中に存在する汚染菌制御を想定して、食品保存料等の効果を検討した。保存料ナイシンを用いた場合、グラム陽性菌である分離菌のStaphylococcus、Listeria菌に対して250ppmの濃度で増殖抑制が可能であったが、エルシニア菌には効果が認められなかった。ナイシン以外の測定に使用した保存料に効果は認められなかった。一方、調理器具からの2次汚染対策として塩素系消毒剤(pH5.0調整)の効果を測定した結果、リステリア菌およびエルシニア菌に対して高い増殖阻害作用(1.25ppm、30秒)を示すことを明らかにした。以上の結果より、低温流通食品には低温増殖菌が存在するため、初発汚染菌濃度をできるかぎり低減し、徹底した低温管理や適切な保存料・殺菌料等の使用により食中毒予防が可能であることを明らかにした。
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