研究課題/領域番号 |
26350112
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
安田 みどり 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20279368)
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研究分担者 |
田端 正明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (40039285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クロロフィル / 光退色 / 界面活性剤 / 凝集 / 光退色 |
研究実績の概要 |
食品業界では、緑茶飲料や野菜ジュースなどの光による退色が問題となっている。これは、緑色色素であるクロロフィルが光によって低分子化合物に分解するためである。我々は、クロロフィルをナノ粒子化することで光による退色を防止することを目的とした。これまでの研究により、非イオン性の界面活性剤であるTriton X-100(以下、Triton)は、クロロフィルの光退色を防止した。本研究では、さらに詳細な研究を行い、クロロフィルの光退色防止のメカニズムについて調べた。その結果、以下のようなことが明らかとなった。 1.Tritonを含む溶液中のクロロフィルミセルの粒径を測定したところ、Triton濃度が臨界ミセル濃度(cmc)の0.155%以上では、約220 nmの大きさの粒子が多かったのに対し、それ以上の濃度では約400 nmの大きさの粒子が多くなった。このことから、cmcの濃度以上では、クロロフィルミセル粒子間の自己集積が起こり、嵩張った構造を取ることがわかった。一方、Triton濃度がcmc以下では、クロロフィル分子同士が相互作用し、凝集作用を形成することで光退色を抑制することがわかった。 2.分光測色計により、UV照射に伴う色差の変化を調べた。UV照射3時間後のa*(-の値が大きいほど緑色を示す)の値は、cmc以上ではTriton濃度が大きくなるほど変化が大きく、0.1%ではa*はほぼ0となり、退色した。一方、cmc以下では、a*の値はほとんど変化せず、光退色を防止した。 このように、界面活性剤の濃度を制御することで光に強いクロロフィルを作ることが可能であることがわかった。 さらに、食品に応用するため、緑茶や大豆に含まれる界面活性剤であるサポニンを用いて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、食品として用いることができる界面活性剤を検討することを目的としていた。そこで、大豆や緑茶に含まれるサポニンを用いたが、クロロフィルが溶けにくかったため、光照射などの実験が遅れている。しかし、クロロフィルの可溶化の方法等を検討しており、次年度の研究に活かす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた成果を踏まえ、最終年度の研究計画を以下に示す。 1.食品として用いることのできる界面活性剤(サポニンなど)を用い、クロロフィルの光退色防止効果を示すかについて調べる。 2.実際に食品に応用するため、緑茶のミセル粒子化により、光退色を防止する方法について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入が予定より少なかったり、人件費・謝金を使用する必要がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、最終年度に当たるため、よりアグレッシブな実験を行う予定で、クロロフィルなどの試薬をはじめとする物品費、成果報告のための出張費、論文投稿のための費用に使用する予定である。
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