研究課題
1 小麦粉を粉のままオーブン加熱して、アレルゲンタンパク質を不溶化させることを目的として実験を行った。①小麦粉を粉の状態でオーブン加熱(200℃)すると、時間とともに一部のタンパク質が不溶化した。②SDS-PAGE分析の結果、検出されるアレルゲンタンパク質の量が加熱処理により減少していた。③ELISA分析の結果、水抽出液中のアレルゲン量が、加熱処理により減少していた。④動物実験の結果、加熱処理したグルテンを摂取したラットの糞重量はやや増えていた。⑤加熱処理後の粉を用いて作ったうどんは、対照に比べて破断強度や破断歪率が低下した。 以上のことより、小麦粉を粉の状態で加熱処理することで、調理性・嗜好性はやや低下するものの、小麦アレルゲンを不溶化できる可能性が示唆された。2 卵または牛乳をパイナップル果肉と均質化することにより、アレルゲンタンパク質を分解するための調理条件を検討することを目的として実験を行った。①牛乳及び卵のタンパク質はパイナップル果肉と均質化して30分以上おくことにより、一部分解する。②パイナップル果肉で処理した牛乳や卵を調理に用いた場合、膨化を必要としない食品において、嗜好意欲度得点が高かった。③パイナップル果肉処理により、パンケーキ中βラクトグロブリン量は大幅に減少したが、オボアルブミン量は変化していなかった。 以上のことより、パイナップル果肉や果汁を用いることにより、熱や消化酵素に対する抵抗性が高いアレルゲンを分解できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
小麦粉を粉のまま加熱処理することにより、アレルゲンを不溶化できることがわかった。また、パイナップル酵素を用いて小麦アレルゲンを分解できる可能性を探ることができた。今後、加熱条件の検討や調理操作によるアレルゲン分解の方法について、さらに研究を進めることが可能となった。
現時点では、加熱処理の最適な条件が確立できていないため、詳細に検討する。アレルゲンが完全に不溶化できない場合や、不溶化=低アレルゲン化とならない場合は、パイナップル酵素などの利用も検討する。また、実際に調理に応用する場合の問題点について、試作や嗜好調査を繰り返して解決する必要がある。
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J Sci Food Agric
巻: 未定 ページ: 未定
10.1002/jsfa.6981.
J Med Invest.
巻: 61 ページ: 345-352