本年度は,カンピロバクター特異的ファージを用いて鶏肉におけるカンピロバクターの効果的な制御法を明らかにするため,カンピロバクターを接種した市販鶏皮についてファージ接種濃度,保存温度および保存形態を変えてカンピロバクターの殺菌効果を検討した。まず,殺菌効果が得られる保存温度について明らかにするため,ファージをMOIが約100となるように接種した後,4℃および20℃で保存して,カンピロバクターの殺菌効果を調査した。その結果,in vitroで高い殺菌効果を示したファージでは,いずれの保存温度でも24時間後にはコントロールと比較して1桁程度カンピロバクター菌数が減少した。一方,in vitroで低い殺菌効果を示したファージでは,20℃保存では48時間後に菌数が1桁程度減少したが,4℃保存では72時間後まで菌数の変化は見られなかった。そこで,4℃保存で殺菌効果が得られたファージを用いて,ファージの接種濃度と鶏皮の保存形態を変えて,保存温度4℃におけるカンピロバクターの殺菌効果を調査した。その結果,ファージをMOIが約 1000となるように接種した後,鶏皮を好気条件で保存した場合では1時間後にコントロールと比較して1桁程度カンピロバクター菌数が減少した後,72時間後までほぼ同じ菌数であった。また,ファージ接種後の鶏皮をフードセーバーを用いて真空パックで保存した場合では,1時間後に菌数が2桁程度減少した後,72時間後までほぼ同じ菌数であった。 以上の結果から,鶏肉におけるカンピロバクターの制御法として,溶菌力の強いファージをMOIが高くなるように高濃度で接種して真空パックの状態で冷蔵保存する方法が効果的であることがわかった。
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