研究課題/領域番号 |
26350115
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大倉 哲也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品健康機能研究領域, 主席研究員 (70353935)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | αグルコシダーゼ / αアミラーゼ/トリプシンインヒビター / 免疫蛍光二重染色 / Elisa |
研究実績の概要 |
ご飯の食味(甘味)においては、グルコースを含む還元糖の果たす役割が大きいと報告されている。本研究では,オリゴ糖の非還元末端よりグルコースを生成するαグルコシダーゼと相互作用するαアミラーゼ/トリプシンインヒビター(以下、アミラーゼインヒビター)に注目し,米の炊飯過程における溶出挙動や米粒一粒レベルからデンプン粒レベルまでの局在の変化等について明らかにすることを目的としている。 平成28年度は、平成27年度から延期されていたアミラーゼインヒビターに対するポリクロ―ナル抗体の作製を行った。このポリクロ―ナル抗体を96穴プレートに固定後、モノクローナル抗体を検出用抗体として用いることで、炊飯液や米粒から抽出した液中のアミラーゼインヒビター量を定量する系を構築した。現状では繰り返し精度が低いことから、サンプリング手法やサンプル調整手法の改善を進めている。 次に、αグルコシダーゼ活性を阻害する活性が高いアミラーゼインヒビター画分を主に認識するモノクローナル抗体を選択、玄米の固定および包埋・染色条件を検討し玄米中で明確な染色像が得られる条件を確立した。これを用い、1つの粳米品種について玄米および90%精米を炊飯する過程でサンプリングした飯粒を固定・薄切後、モノクローナル抗体とαグルコシダーゼのペプチド配列に対するポリクローナル抗体による蛍光二重染色を行った。プレリミナリーな結果ではあるが、この品種ではαグルコシダーゼとアミラーゼインヒビターとが共局在しない切片があった。これまでコシヒカリ・ミルキークイーン・日本晴では、炊飯中αグルコシダーゼとプルラナーゼとは胚乳細胞壁に主に共局在するという結果が得られているため、他切片において上記結果の再現性を確認するとともに、他の粳米品種を用いて、炊飯中のアミラーゼインヒビターの挙動について詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内では以下の3つの項目について明らかにする予定である。 1.コシヒカリにおけるアミラーゼインヒビターの局在の解明と溶出挙動解析について、免疫蛍光染色法を用いてコシヒカリ玄米におけるアミラーゼインヒビターの分布を明らかにするとともに、炊飯過程における溶出挙動をイムノブロット法で解析する。 2.異なる米品種でのアミラーゼインヒビターの局在の解明と溶出挙動解析について、免疫蛍光染色法を用いて異なる品種の米におけるアミラーゼインヒビターの分布を明らかにするとともに、炊飯過程における溶出挙動をイムノブロット法で解析する。 3.アミラーゼインヒビターとαグルコシダーゼの相互作用と動態解析について、炊飯過程におけるアミラーゼインヒビターとαグルコシダーゼの動態を免疫染色法で,量的な相関をElisa法で解析し,さらに異なる温度履歴で調理する場合や、食味が異なる同一品種で動態解析を行うことで、相互作用によるグルコース生成の調節メカニズムを解明する。 平成27年度にポリクローナル抗体が作成できなかった余波から、イムノブロット解析は予定よりも遅れているものの、1,2,3の内で、イムノブロット以外の免疫染色による局在解明については、順調に結果が得られている、またElisaの平行精度についても、サンプリング手法の改善で解決の兆しがみられていることから、研究期間内に3つの項目を解明できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定よりも遅れているイムノブロット解析による溶出挙動解析を3つの粳米品種について進める。さらに、異なる品種でのアミラーゼのインヒビターの局在解析を進めるとともに、改善しつつあるElisa法を用いた定量解析により、アミラーゼインヒビターとαグルコシダーゼの相互作用によるグルコース生成の調節メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、論文投稿料ならびに研究材料の購入に使用する。
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