ご飯の食味(甘味)においては、グルコースを含む還元糖の果たす役割が大きいと報告されている。本研究では,オリゴ糖の非還元末端よりグルコースを生成するαグルコシダーゼと相互作用するαアミラーゼ/トリプシンインヒビター(以下、アミラーゼインヒビター)に注目し,米の炊飯過程における溶出挙動や米粒一粒レベルでの局在の変化等について明らかにすることを目的としている。 最終年度は、平成28年度に作製したアミラーゼインヒビターに対するポリクロ―ナル抗体を固定用抗体として、平成27年度に作製したモノクローナル抗体を検出用抗体として用い、炊飯液や米粒ならびに米粉からの抽出条件の最適化を図りながら、抽出液中のアミラーゼインヒビター量を定量する系の構築を試みた。米粒については、繰り返し精度が低く定量を行うことができなかったものの、炊飯液についてはイムノブロットで得られた溶出挙動結果と矛盾しないプレリミナリーな結果が得られている。 次に、αグルコシダーゼ活性を阻害する活性が高いアミラーゼインヒビター画分を主に認識するモノクローナル抗体を用いて、3種の粳米品種(コシヒカリ・ミルキークイーン・日本晴)について玄米および90%精米を炊飯過程の飯粒において、αグルコシダーゼのペプチド配列に対するポリクローナル抗体による蛍光二重染色を行った。品種や炊飯途上の米粒によってはαグルコシダーゼとアミラーゼインヒビターとが共局在しない切片があった。この局在の差が、炊飯中の米粒中のアミラーゼインヒビター量と相関するかについては、米粒中のインヒビターが定量できていないため現時点では不明である。また、米粒中のアミラーゼインヒビターとαグルコシダーゼの相互作用は免疫沈降により確認できたものの、定量的解析が現時点で行えていないため、インヒビターとの相互作用が飯の糖量に及ぼす効果については、今後の課題として残された。
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