研究課題/領域番号 |
26350118
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
根岸 裕子 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (50523841)
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研究分担者 |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00264755)
山形 一雄 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10299323)
池田 克巳 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (80273499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / インクレチン / 肥満 / 高血圧 / GLP-1 / 腎臓 |
研究実績の概要 |
インクレチンのひとつGLP-1について、メタボリックシンドロームモデルラットにおいて、血中で増加しており、各臓器において、病態によりGLP-1受容体発現が異なることを見出した。そこで、本年は、これらの詳細なメカニズムを解明するとともに、インクレチン分泌促進に関与する食品、植物の可能性について探索を実施した。 具体的には、生薬やその抽出成分、または酒粕等の投与を脳卒中モデル動物に実施した。その結果、酒粕及び酒粕ペプチドにおいて、GLP-1の腎臓での発現亢進、AT1Rの発現減少、血中でのGLP-1上昇、酸化ストレス減弱作用を有することを明らかとした。 また、in vitro系では、うま味や甘味成分であるグルタミン酸、テアニン、アスパルテーム、その他食品成分の小腸細胞におけるGLP-1産生作用を明らかにするため、ヒト小腸L細胞HuTu80を使用してプロプレグルカゴンなどの遺伝子発現に対する影響を検討した。 その結果、複数の成分において、プロプレグルカゴンの遺伝子発現を誘導する作用を特定し、その作用へのカルシウム感受性受容体やガストデューシンの関与、さらにうま味と甘味の両受容体が一部関与することを明らかにした。これら結果は、おいしさ成分が、小腸でうま味や甘味受容体に作用し、ガストデューシンの上昇発現させると同時に細胞質カルシウム濃度を増加させてGLP-1産生を増強させる可能性を示した。 以上の結果より、本年度はGLP-1の作用機序について、一部明らかとし、インクレチン分泌促進作用を有する成分の候補を見出し、その作用機序の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、疾患モデル動物、メタボリックシンドロームモデル動物を用い、メタボリックシンドロームおよびその基盤病態へのインクレチンの影響を検討することを目的としている。 1年目に肥満・摂食・メタボリックシンドロームにインクレチンが関与している可能性が示唆され、さらに腎障害との関与についても興味が持たれた。 そこで、2年目は、数種の成分を生活習慣病モデルラットに投与し、影響を検討した。さらに、in vitro系では、インクレチンへの影響が考えられる成分の探索を実施し、その作用機序の一部を明らかにした。 2年目も、それぞれの研究進捗状況について、メールでの意見交換を頻回行い、学会において開催時間外にも討論および今後の予定について確認を行った。以上のことから、本課題は順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これら得られた結果について、精査するとともに、さらに詳細な検討を加え、国際誌への投稿を予定している。 しかし、インクレチン分泌促進効果を有すると仮定した成分について、一部ネガティブな結果も得られていることから、病態および臓器により、その作用機序が異なる可能性も考えられる。そこで、各種生活習慣病を有するメタボリックシンドロームモデル動物だけではなく、各病態を発症するモデル動物を用いての実験を追加し検討していくとともに、in vitro系での作用機序の検討が重要となってくると考えている。これらについて、今後検討していく予定である。 本共同研究を実施することにより、各専門分野の垣根を越えた意見交換が可能となり、今後さらに新たな研究発展の可能性が見いだせた。
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