研究課題/領域番号 |
26350120
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片倉 賢紀 島根大学, 医学部, 助教 (40383179)
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研究分担者 |
紫藤 治 島根大学, 医学部, 教授 (40175386)
橋本 道男 島根大学, 医学部, 准教授 (70112133)
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / うつ病 / オリゴデンドロサイト / 神経幹細胞 |
研究実績の概要 |
うつ病発症機構は未解明な部分が多く、治療薬による副作用、治療抵抗性や再発の問題も指摘されている。うつ病患者の脳ではニューロンやオリゴデンドロサイトが欠落していることが報告されている。その要因の一つには、脳内不飽和脂肪酸の不足があげられ、食事からの摂取不足や遺伝子変異による生合成能の低下が関与すると考えられる。うつ病の予防に多価不飽和脂肪酸とくに魚介類由来のドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸が有効であることが示唆されているが、その詳細は解明されていない。本研究では、この作用機序にオリゴデンドロサイトの新生・分化が関与していると考えている。本年度は、以下の2つの検討を行った。 (1)ラット胎児の脳から採取した神経細胞から神経幹細胞を選択培養した。その後、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞へと誘導し、この細胞の増殖・分化(成熟)に対する多価不飽和脂肪酸の影響を検討した。オリゴデンドロサイト前駆細胞への多価不飽和脂肪酸を添加は細胞の生存率に影響しなかった。今後は、分化度の変化、分化促進機構をこの培養系を用いて検討する予定である。 (2)島根大学疾病予知予防研究拠点で行われている前向きコホート研究参加者のうち2014年度健診参加者約620名の赤血球から膜画分を生成し、ガスクロマトグラフィーで総脂質中の脂肪酸を定量した。今後、コホート研究データベースの結果と脂肪酸組成との間の関連を統計解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞へ分化させる培養系を確立した。しかし、多価不飽和脂肪酸による増殖・分化調節機構の解析には至っていない。 島根大学疾病予知予防研究拠点で行われている前向きコホート研究参加者のうち本年度健診参加者約620名の赤血球膜脂肪酸の測定を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
確立したオリゴデンドロサイト前駆細胞へ多価不飽和脂肪酸を添加し、その形態変化、細胞内情報伝達機構の変化を検討する。 測定した赤血球膜脂肪酸の組成と精神神経機能(自己評価式抑うつ性尺度)や生化学検査結果との関係を明らかにする。 うつ病モデル動物における多価不飽和脂肪酸の効果を検証する。 コホート研究参加者の不飽和脂肪酸合成酵素遺伝子の多型を解析し、赤血球膜脂肪酸との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養実験系の確立に時間がかかり、動物実験を本格的に始動できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
うつ病モデルラットでの研究を開始し、研究成果を学術論文等でも積極的に報告する。
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