研究課題
我々は、n3系脂肪酸に親和性が高い脳型FABP (FABP7) の有無が、実験的腸炎や肝障害など、消化器系の炎症の憎悪を制御することを突き止めた。1. 免疫細胞におけるFABP7の発現機序の検討:生体内マクロファージで唯一、肝マクロファージ (Kupffer細胞) にのみFABP7が発現していることに着目した。発達期肝臓におけるKupffer細胞のFABP7発現時期を同定するため、免疫組織化学的な検討を行ったところ、FABP7陽性Kupffer細胞は生後4日より観察された。また、放射線や薬剤を用いてKupffer細胞を除去し、新たに肝臓に定着したマクロファージがFABP7を発現することを明らかにした。この結果から、生後構築される特異的環境によりFABP7が誘導されることが示された。FABP7を強制発現させた細胞を用い、FABP7が誘導される環境の構築を試み、その結果を日本解剖学会第70回中国・四国支部学術集会で発表した。現在引き続き詳細を検討中である。2. FABP7による腸内環境の制御の解析:FABP7の欠損が腸粘液の成分や糞便の細菌叢を変化させ、炎症に変化をもたらすのではないかという仮説の下に、野生型マウスとFABP欠損マウスの糞便を収集し、粘液の成分と細菌叢について解析した(継続中)。3. 肥満状態においてFABP7が免疫系にもたらす影響についての検討:FABP7欠損マウスおよび野生型マウスの双方に高脂肪食を摂取させ、肥満モデルを作成した。これらのマウスのリンパ球の相対量の差異について解析した(継続中)。
2: おおむね順調に進展している
1)27年度までの研究により、炎症と消化器の免疫細胞の脂肪酸動態に密接な関係があることを示し、さらにそれを制御する因子についての研究を進めた。2)実験に必要な肥満モデルの作成方法を確立し、さらにそれを用いてデータを得ることができた。3)脂肪酸結合タンパク質の欠損と糞便の内容についてのデータを得た。
26年度の研究結果より、炎症によって免疫系の細胞およびそれを制御する細胞の脂肪酸の要求性が変化するのではないかという仮説を立てた。そして27年度はそれに基づいた実験を行い、データを得た。28年度は実験を継続するとともに得られたデータを解析し、肥満と炎症および糞便の内容についての関係を考察する。
本年度の実験内容に変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により、未使用額が生じた。
上記の未使用額については、平成28年度の実験試薬の購入に充てる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 9件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
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