食生活の偏りに伴い増加している2型糖尿病等の疾患は、脂肪組織の炎症が関与している。腸内細菌叢は免疫系の構築や機能に重要な役割を持っており、食生活の違いが腸内細菌叢のバランスに影響を与える。これらの背景から食生活の乱れによる脂肪炎症関連疾患の発症に腸内細菌叢の変化、およびPSMB8などの分子がどのように関連するのかを明らかにすることを目的とした。脂肪炎症について詳細な検討を行うために、高脂肪食を与えた野生型マウスおよびPSMB8欠損マウスの内臓脂肪及び皮下脂肪よりcDNAを調製し、炎症性のサイトカインやケモカインの発現を調べた。内臓脂肪におけるTNFαの発現は、普通食を与えたマウスでは野生型と欠損型で有意な差は見られなかったが、高脂肪食を与えると、欠損型と比較して野生型で有意に上昇していた。皮下脂肪における発現は、食餌の種類に関わらず、野生型で高い傾向を示した。内臓脂肪におけるIL-6の発現は、普通食では野生型よりも欠損型の方が高かったが、高脂肪食を与えたマウスではこの差は見られなくなっていた。MCP-1の発現については、内臓脂肪についても皮下脂肪についても、野生型の方が高く、この傾向は食餌を変えても見られた。次に、脂肪組織内に浸潤している細胞の解析をフローサイトメトリーを用いて行った。普通食もしくは高脂肪食を与えたマウスの内臓脂肪より、stromal vascular fractionを分離して解析を行ったところ、F4/80陽性CD11b陽性のマクロファージの割合が、普通食では野生型と欠損型で差はなかったが、高脂肪食を与えた場合、普通食を与えた場合よりも高くなり、しかも野生型よりも欠損型の方が多い傾向を示した。これらの結果は、PSMB8分子の欠損はマクロファージの浸潤を促進するかもしれないが、脂肪全体の炎症誘導には大きな影響を与えないことを示唆している。
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