研究課題/領域番号 |
26350125
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
増田 修一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40336657)
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研究分担者 |
島村 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 化学物質 / 遺伝毒性 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 肥満 / 小核試験 / コメットアッセイ / 薬物代謝酵素 |
研究実績の概要 |
現在、糖尿病、肥満など生活習慣病の患者数が増加し、大きな社会問題となっている。また、食品中には多種多様な化学物質が存在しており、これら化学物質の安全性を評価するために正常の実験動物を用いた毒性試験が行われるが、実際のヒトに対するリスクを考えた場合、生活習慣病や食習慣により化学物質の生体内挙動などに変化が生じ、その毒性が変動することが考えられる。本研究では生活習慣病状態により食品中化学物質の毒性発現が変動するかin vitroおよびin vivoの各種毒性試験(小核試験、コメットアッセイ等)を用いて確認する。また、化学物質の生体内での挙動がこれらの要因により変動するか機器分析等を用いて調べる。さらに、生活習慣病状態時における生体内での薬物代謝酵素の活性および発現について正常状態時と比較して確認する。以上のことを実施することにより、食品中化学物質のヒトに対する安全性を評価する上で新たな知見を見出す。 平成26年度では、ストレプトゾトシンをICRマウスに投与してⅠ型糖尿病モデルマウスを作成し、これらまたは正常マウスに食品中化学物質であるアクリルアミドを経口投与した。投与後に解剖を行い、各種遺伝毒性試験を用いて遺伝毒性の変動を調べた。その結果、正常群にアクリルアミドした場合よりも糖尿病群群で有意な遺伝毒性の増強がみられた。また、各臓器中で薬物代謝酵素CYP2E1の活性や発現の上昇が確認できた。さらに、アクリルアミドの代謝物であるグリシダミドの生体内濃度を測定したところ、有意な増加がみられた。これらの成果より、糖尿病状態時においては、摂取する食品中化学物質または成分により遺伝毒性の増強が起こることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、生活習慣病モデル動物として、糖尿病モデルマウスを作成し、これらに食品中化学物質であるアクリルアミドを経口投与し、毒性、生体内挙動、薬物代謝酵素の活性および発現変動について調べた。これらの成果は当初の予定通りに順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において、糖尿病モデル動物に食品中化学物質であるアクリルアミドを投与することにより、染色体異常やDNA損傷性等の遺伝毒性の増強がみられ、薬物代謝酵素CYP2E1活性および発現の上昇、アクリルアミドの生体内代謝物であるグリシダミドの増加がみられた。平成27年度では、各種肥満モデルマウスにアクリルアミド等の食品中化学物質やモルホリン等の食品成分を経口投与し、遺伝毒性の変動、化学物質の生体内挙動の確認、各種薬物代謝酵素の活性および発現の変動について、様々な試験法を用いて調べる。さらに、肉食または野菜食等様々な食習慣を考慮したモデル食餌を作製して実験動物に一定期間摂取させた後、食品中化学物質を投与して、化学物質の毒性や生体内における挙動、肝臓等における薬物代謝酵素の活性や発現の変動を測定する。また、糖尿病および肥満モデル動物の糞から腸内細菌を採取した後、食品中化学物質や成分とともに培養し、得られた代謝物の遺伝毒性についても調べる。これらの得られた成果について、実際にヒトにおいても同様の結果が得られるのか、生活習慣病患者または様々な食習慣をさせた被験者に食品中化学物質(アクリルアミドなど:安全性が評価された、また毒性が発現しない量)を経口的に摂取させた後、血液や尿中の化学物質量または代謝物量をLC/MS/MSやHPLCなどの機器分析を用いて測定する。また、生活習慣病患者や様々な食習慣をさせた被験者の糞から腸内細菌を採取して食品中の化学物質とともに培養し、培養液中の代謝物の構造や遺伝毒性をNMR、LC/MS/MSおよび遺伝毒性試験で調べる。今後の研究はこれらの計画をもとにおこない、最終年度において新たな化学物質のリスク評価指針の策定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも、糖尿病モデル動物に二級アミンであるモルホリンを投与して、遺伝毒性の変動等を評価できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、糖尿病モデル動物に二級アミンであるモルホリンを投与し、遺伝毒性の変動等について明らかにする。
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