研究課題/領域番号 |
26350126
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
矢野 仁康 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40304555)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストレス蛋白質 / ポリフェノール / 癌 / 細胞死 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、“ストレス蛋白質発現調節機能”を基に、食品成分が有する新しい2つの発癌抑制メカニズムを明らかにする事で、食を通したより効果的な癌予防対策法の開発を目指す事にある。前年度までの研究で、ポリフェノール類の中のレスベラトロールとクルクミンには、各々、ストレス蛋白質であるHsp90とHsp70に対する発現抑制を介して、ヒト肺癌細胞A549に対してその増殖抑制機能に繋がる細胞周期停止作用(レスベラトロール)と細胞死誘導作用(クルクミン)があることを見出してきた。今年度の研究では、①これら食品成分が、どの様なメカニズムでストレス蛋白質の発現を抑制しているのか、さらには、②ストレス蛋白質であるHsp90やHsp70発現抑制が、どの様に細胞周期停止や細胞死誘導を引き起こしていくのか、これらメカニズムの詳細についての解析を行った。その結果、これらポリフェノール類には、Hsp90とHsp70の転写因子であるHSF1を介してその発現を抑制させる共通の分子メカニズムがあることが明らかとなった。一方、食成分によるHsp70の発現抑制は、Baxのミトコンドリア移行を促進させて癌細胞死を誘導していることが明らかとなった。また、食成分によるHsp90に対する発現抑制作用は、G2/M期で細胞周期を停止させている場合は、CDK1,cdc25c等のHsp90のクライアント蛋白質を不活性化させる事で、さらに、G1/S期で細胞周期を停止させている場合は、癌抑制遺伝子であるp53経由でp21を活性化させる事で細胞周期停止に繋がっていくことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞増殖抑制効果を有する食成分に備わる共通の機構として、ストレス蛋白質を介した細胞死誘導機能と細胞周期停止作用の詳細を明らかにしつつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
ストレス蛋白質発現抑制を介した細胞死誘導機能と細胞周期停止作用が、癌細胞増殖抑制機能を発揮する他の食品成分にも備わる共通の機構か否かの検証を行う。現在、他のポリフェノール類であるヘスペレチンや唐辛子の辛味成分であるカプサイシン等にも同様の効果があることを見出していることから、これら食品成分が示す細胞死誘導機能と細胞周期停止作用の詳細な分子メカニズムを明らかにしていく予定である。
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