これまでに申請者は、高脂肪食摂食によって肥満を誘発したマウスにビタミンAを投与したところ、エネルギー消費量の増加に伴い、体脂肪量が著しく減少したことを見出した。そこで本研究では、どのような機序でその肥満マウスの体脂肪量が減少したのかを追究することを目的とした。その結果、ビタミンAを投与したマウスの副睾丸脂肪組織(eWAT)では、エネルギー消費量の増大に関わるAMP-activated protein kinase(AMPK)活性が上昇していたことを見出した。それに伴い、ビタミンA投与群では、脱共役タンパク質(Uncoupling protein 1:UCP1)やPeroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha (PGC-1α) のようなエネルギー消費に関連する遺伝子発現量が増大した。更に、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞様の機能(ベージュ細胞と呼ばれる)に誘導する遺伝子発現量が、ビタミンA投与群のeWATで増大した。これらの遺伝子発現量の増大はAMPKによって調節されている報告されており、今後はビタミンAがどのような機序でAMPK活性を上昇させているのかを追究することが研究課題となる。このように、ビタミンA投与による肥満マウスの体脂肪減少は、AMPK活性上昇に伴うエネルギー消費量の増大によるものだと示唆された。その一方で、eWATのビタミンAレベルは対照群と比較して劇的に高く、更にビタミンA過剰症で観察される脱毛や骨密度の低下が示された。以上のことから、肥満マウスの体脂肪を減少させるためには、大量のビタミンA摂取が必要とし、更にビタミンA過剰症が伴う危険性が示唆された。 これらの研究成果は、6月に開催される日本ビタミン学会で発表し、更に現在、学術論文にも投稿中である
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