研究課題
酸化ストレスは、糖尿病を誘発する原因のひとつと考えられている。また、糖尿病を発症すると酸化ストレスがさらに増加し、腎症や網膜症等の合併症を引き起こすことが知られている。我々は、これまでの研究により、水素分子(H2)が有害な活性酸素種のみを選択的に還元し糖尿病を含めた様々な疾患の改善に効果的な抗酸化剤であることを報告している。これまでに行った研究により、2型糖尿病のモデルマウスdb/dbにおいて水素水を飲用水として3ヶ月間自由摂取することにより肝臓で分泌されエネルギー代謝を調節するホルモンFGF21の遺伝子発現が増加することが明らかとなっていた。しかしながら、この結果はH2の長期摂取によるものなので、FGF21の遺伝子発現の増加がH2による効果の原因なのか、二次的な結果なのか不明であった。本研究では、H2の投与期間を短くして効果が現れるより前の段階において遺伝子発現の変化をマイクロアレイにより網羅的に解析を行った。その結果、H2は脂肪酸およびステロイド代謝に関与する種々の遺伝子の発現を増加させることを明らかにした。これら遺伝子群の転写活性化経路としてPPARαシグナルパスウェイが同定され、初期の反応としてPGC-1αの遺伝子発現が増加し、続いてFGF21の遺伝子発現が増加することがわかった。その分子機構としては、培養細胞を用いた実験結果よりH2は、4-ヒドロキシ-2-ノネナールおよびAkt/FOXO1シグナリングを介してPGC-1αの遺伝子発現を間接的に調節していることが示された。また、高脂肪食を与えた野生型マウスの結果から、水素水の飲水は血中トリグリセリドのレベルを改善し、平均寿命をのばす効果があることが示された。
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Sci Rep.
巻: 7 ページ: 39752
10.1038/srep39752.
巻: 7 ページ: 46240
10.1038/srep46240.