本研究課題では、美味しさ感を食品カラーリストから推定し、食事の彩り(食彩)を実食上で高品質に色再現することを目的として研究を遂行してきた。協調投影により表面特性の影響を抑えた複合現実感ディスプレイを構築し、このディスプレイを用いて、高齢者の摂食動機を効果的に向上させる食彩支援システムの実現を目指した。この研究目的に対して、初年度は、最適位置から協調投影する複合現実感ディスプレイを構築し、小型ロボットの軌道制御による協調プロジェクションシステムを実装し、実物体に対するプロジェクタの投影光とカメラの関係について求めた。これに引き続き次年度は、高齢者の特性に対応した食彩提示のための食品カラーリストを導出した。画像データベースを用いて食品カラーリストを算出し、このリストを色空間にマッピングした結果を対話形式で喫食者が絞り込み、食彩改善のために必要な提示色を推定した。また、高齢者の視覚特性となる短波成分の通過光量について補正し、高齢者の視覚特性に基づいた色補正を行った。最終年度である今年度は、初年度と次年度の研究成果である複合現実感ディスプレイと食品色の算出方法を食彩支援システムとして統合した試作システムを構築し、このシステムのための食彩変更操作パネルを設計・実装した。また、本システムを用いた評価実験を実施し、食彩改善の結果分析およびシステムの色再現性について検討した結果より、食彩改善による摂食動機の効果と重要性について確認した。
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