代謝活性のある褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞は、全身のエネルギー代謝にも関与している。肥満や加齢により褐色脂肪が消失した人においても、ベージュ脂肪細胞の誘導を促進することができ、肥満・メタボリックシンドローム治療の標的として注目されている。 本研究で用いた肥満モデルラットは、若週齢より肥満・高血圧を呈し、ヒトメタボリックシンドロームと同様な病態を示す。このラットは、非肥満同胞と比較して褐色細胞の消失が大きく、白色脂肪細胞の著しい増加および肥大化が認められる。メタボリックシンドロームにおけるベージュ脂肪細胞の基礎的知見を得るため、当初の予定では、肥満モデルラットの脂肪細胞において、UCP1を発現する褐色細胞とベージュ細胞をRFPで永続的にラベルし、肥満に伴う脂肪細胞の機能形態変化を把握できるトランスジェニックモデルの作製準備をしていたが、台風の停電による機器トラブルでサンプルを消失したため、マイクロRNA(miRNA)や培養細胞を用いた基礎的検討を行うよう研究計画を変更した。 miRNAはその標的mRNAに対して不完全な相同性をもって結合し、一般に標的遺伝子の3'UTRを認識して、標的mRNAを不安定化するとともに翻訳抑制を行うことでタンパク質産生を抑制する。肥満モデルラットの脂肪細胞においてプロファイリングを行った結果、肥満モデルラットではmiR-1188、138、143、466b-2の発現が非肥満と比較して抑制され、肥満における脂肪細胞の形態変化に関与が考えられた。 また、ルイボス茶は、ポリフェノールを豊富に含み、その抗酸化作用や免疫活性作用が注目されている。ルイボス茶葉熱水抽出物は、白色脂肪細胞の分化抑制効果は認められなかったものの、褐色脂肪細胞特異的遺伝子であるUCP1の発現増加傾向が認められ、脂肪細胞の褐色化に有用な候補物質である可能性が示唆された。
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