研究課題/領域番号 |
26350137
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
高橋 享子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (50175428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経口免疫寛容 / 食物アレルギー / アレルギーモデルマウス |
研究実績の概要 |
近年,経口免疫療法 (OIT) が食物アレルギーの治療法として注目されている.しかしながら,これまでの報告において,OITは重度のアレルギーモデルマウスのアレルギー反応を減少させている.本研究は,軽度のアレルギーモデルマウスを作製し,10日間の急速OITによるアレルギー反応の抑制について検討した. Balb/cマウスをオボムコイド (OM) とAlumで感作させた.OIT期間は,10日間とした.OITの効果は経口負荷試験によるアレルギー反応で評価した.また,アレルギー生体指標として,皮膚血管透過性,血漿中総IgEとOM特異IgE・IgG1・IgG2a濃度,脾リンパ球培養上清中サイトカイン濃度を測定した. 10日間のOITは,アレルギー兆候レベルを改善せず,血管透過性を増加させた.OIT治療群の血漿中総IgE濃度は非治療群よりも有意に高値であった.血漿中OM特異IgG1とIgG2aレベルは,OIT治療群と非治療群で有意差は認められなかった.脾細胞のサイトカイン放出において,OIT群のIFN-γとIL-10は非治療群よりも有意に低下し,IL-4とIL-5は有意に高値を示した.総TGF-β濃度は,OIT治療群では検出限界以下であった.OIT治療群のIFN-γ/IL-4の比率は,非治療群の約1/8であった. 軽度のアレルギーマウスにおいて,10日間のOITはアレルギー反応を改善せず,いくつかの生体指標においてネガティブな応答を示した.以上の結果より,急速OITはアレルギー症状を悪化させる危険性を持っているため,治療の導入は慎重に判断するべきであると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食物アレルギー治療の経口免疫寛容には、急速経口免疫寛容と緩除経口免疫寛容の治療法が行われている。患児にとって、負担が少なく危険が伴わないのは緩除経口免疫寛容であるが、治療期間が長引くというデメリットもある。平成26年度は、短期間での急速経口免疫寛容をモデルマウスを用いて検討した。モデルマウス作製にあたり、アレルゲン経口投与及び復腔内アジュバンド投与により誘導を行った。さらに、血清IgE抗体価およびIgG1抗体価の上昇が得られた。この事により、アレルギー惹起が誘導されモデルマウスが作製されたと考えられた。次に、短期間での経口治療のため、経口はゾンデ法で投与を行った。その結果、急速経口免疫寛容での治療では、抗体価やサイトカイン産生から、アレルギー症状が緩和する方向ではなく症状を悪化させたと推定された。従って、ヒトにおける経口免疫寛容においても、急速経口免疫寛容治療を行う場合には、症状悪化のリスク除去が必要と考えられた。以上より、平成26年度は、短期の急速経口免疫寛容治療について検討し、その結果が得られたため研究計画は大凡順調に進めたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度研究計画では、モデルマウスにおける長期経口免疫寛容の治療効果について検討を行う予定である。モデルマウスに於けるアレルゲンの投与法は、平成26年度では、アレルゲン溶液をゾンデ投与で直接、消化管に投与を行った。しかし、固形物餌として継続的に食餌経口摂取を行うことにより、アレルゲンによる免疫寛容が消化管での消化や吸収を介して局所免疫寛容と全身免疫応答の誘導関連性を検討することが可能と考えられる。従って、アレルギーモデルマウスに対して長期間の食餌摂取を継続し、アレルギー負荷状況、腸管免疫応答及び全身免疫応答について、血液中の抗体価、脾細胞産生サイトカイン価から免疫応答性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していました金額より安い価格で購入ができましたため、次年度使用額として残りました。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費に加えて使用します。
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