経口減感作を誘導する最小の抗原摂取量については明らかになっておらず、必要以上に抗原を摂取している可能性がある。そのため、ある一定の範囲の量以上で摂取を続ける事により耐性獲得を誘導できると考えた。以上の仮説を鑑みて、本研究は以下の2点において特色・独創性を有した。①個別対応可能な経口免疫療法:クッキー作製に使用する卵白粉末量と1日あたりの摂取枚数を自在に操作することにより、アレルギーの重症度に合わせた経口免疫療法を実施できる。②低量維持経口免疫療法による免疫寛容:クッキーの提供枚数を最大5~10枚程度と想定している。 過去の低アレルゲン化卵ボーロの研究結果を加味すると、本研究においても免疫寛容が誘導されることが想定される。必要以上に抗原摂取量を増加させない本治療は、治療中のアレルギー症状発症を防ぎ、患児やその保護者の摂取量増量に対する不安を軽減することにより、より安全に実施できる。本研究の意義はこの点にある。結果 平成26年度では、アレルギーモデルマウスに急速免疫寛容を施した結果、アレルギー症状は改善されず、いくつかのバイオマーカーにおいては悪化傾向を示した。平成27年度では、アレルギーモデルマウスに抗原添加飼料を用いた長期経口免疫療法を施した結果、1%抗原添加飼料がアレルギー症状を緩和させた。平成28年度では、低アレルゲン化卵ボーロ用いた長期経口免疫療法を重篤卵アレルギー患児に実施した結果(研究期間を通じて実施していた)、低容量であっても抗原を継続して摂取することが免疫寛容を誘導できることに加え、いくつかの抗原特異抗体価が経口免疫療法の効果を反映する指標として有効であることを明らかにしている。以上の結果より、少量であっても長期的に抗原を経口摂取し続けることが、免疫寛容を誘導する上で重要であると示唆された。
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