研究課題/領域番号 |
26350140
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
梅垣 敬三 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 情報センター, センター長 (60191920)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 葉酸 / 緑茶 / 茶カテキン / バイオアッセイ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、通常の食材中に含まれる天然型葉酸について、in vivoにおける生体利用率の評価系構築とそれを活用した葉酸の有効性評価について検討している。初年度は、少量の試料でも評価が可能なマウスを用いた評価系構築について、葉酸に合成型のfolic acidを用い、血漿・肝臓・骨髄の葉酸濃度と血漿ホモシステイン濃度を指標として、葉酸欠乏食の負荷期間、再摂取期間を検討した。その結果、葉酸欠乏食の負荷期間は5週間程度が適当であること、再摂取期間は1週間で評価が可能なことを明らかにした。評価系に利用するマウスの系統については、飼料摂取量と体重の違い以外に影響はなかった。葉酸は複数の化合物の総称であり、それらの葉酸を網羅的に分析するにはバイオアッセイ法が適しているが、バイオアッセイ法では、試料の前処理酵素および葉酸要求性菌体の増殖に食品中の成分が影響する可能性があった。その例として日本人の葉酸供給源の一つである緑茶に含まれる茶カテキン類がある。緑茶中には茶カテキン類が多量に含まれている。そこで本年度は、バイオアッセイ法による葉酸定量に対する茶カテキン類の影響を検討し、エピガロカテキンガレート(EGCG)とエピカテキンガレートがバイオアッセイ法の前処理酵素と菌体増殖を強く阻害すること、その他のカテキン類はほとんど影響しないことを明らかにした。一方、EGCGが多量に存在する緑茶中の葉酸のバイオアッセイ法による定量において、EGCGは各測定操作段階で阻害濃度以下となるため、実質的に葉酸定量に影響しないこと、緑茶中の葉酸の多くはポリグルタミン酸型で存在することを明らかにした。EGCGが食事葉酸(ホウレンソウ由来のポリグルタミン酸型)の体内吸収に影響するか否かをマウスのin vivo葉酸欠乏-再負荷系で検討したところ、飼料中に十分な量の葉酸が含まれていれば、EGCGはホウレンソウ由来の葉酸の体内吸収に影響しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスのin vivoにおける葉酸欠乏-再負荷の評価系の構築は、ほぼ予定通り設定できた。葉酸のバイオアッセイ法による定量における食品中の茶カテキン類の影響を検討し、エピガロカテキンガレート(EGCG)が酵素阻害や抗菌作用を有するため、葉酸定量に影響する可能性が危惧されたが、実際のバイオアッセイ法による定量では、EGCGが阻害濃度以下となるため、実質的な定量に影響を与えないことなどを明らかにした。本実験の評価系に利用するマウス系統差の検討において、マウスに原因不明の肝障害を起こす個体が多数出現したため、研究実施の遅れなどの若干の問題はあったが、研究はほぼ予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から2年度目までに設定したマウスin vivoにおける葉酸欠乏-再摂取の評価系を詳細に検討し、評価に最も適したマウスの系統と実験条件を明らかにした。また、ホウレンソウ中の葉酸の生体利用性に対する飼料中EGCGの影響の検討実験において、評価系の実用性を示すことができた。そこで3年目は、ホウレンソウの凍結乾燥品を天然型葉酸として用い、その放射線暴露に対する防御効果を、マウスの欠乏-再負荷系で検討する。具体的には葉酸欠乏食をマウスに負荷し、その後にFolic acidまたはホウレンソウ由来の葉酸を1週間摂取させた後にX線を全身照射し、骨髄染色体損傷度と体内葉酸濃度の関連から、ホウレンソウ由来の食事葉酸の有効性をfolic acidと比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの系統差を評価した実験において、マウスの個体に肝障害を起こすものが多数出現したため、原因調査のために実験を中断したことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
計画が若干遅れたが、予定通りに研究を実施する。
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